第16話 茨城恭介 ①

【栃木雄仁side】



 ひどいんだべ、あんまりだべ !

 非公開新聞部の奴等は悪魔なんだっぺ。

 親友の下都賀志郎しもつが しろうにソッと耳打ちして教えてもらわなければ気付かなかったっぺ !


 シャイアンとの争いを止めたオラ達は教室から出て屋上に来た。

 アホなシャイアン達は非公開新聞部の号外に気付くこと無く、クラスメイトに聞こえるように自慢をしているんだっぺか。


 粕谷剛かすや たけし鷺田脛夫さぎだ すねお


 完全にはだかの王様だっぺ。

 カスとサギと一緒に見られていたなんて恥ずかしいだべ。

 ほとぼりが冷めた頃に教室に戻ると後ろの隅にある机の上にカゴが乗っていて、中には小さなチョコ菓子が沢山入っていた。

 カゴには張り紙があり……


 ──────────────────


 昼休み後の掃除で働いたぶんだけ ご自由にお取りください!


 ハッピーバレンタイン!


 by 女子生徒一同


 ───────────────────


 やってやる、やってやるっぺ !

 その日、オラ達だけで無くモテない男たちに寄る、お掃除大作戦が繰り広げられたっぺ。

 シャイアン達は掃除をサボったのに、茨城恭介は律儀に掃除に参加しようといたので追い出したっぺ。

 可愛い幼馴染み達からチョコを貰えるクセに、まだチョコを欲しがるなんて、茨城は ものすごく強欲なんだっぺ。

 義理だろうが同情だろうが、母ちゃん以外からチョコを貰えるチャンスは逃さないんだっぺよ !






 放課後、帰りに食べたチョコ菓子は、何故かあまジョッパかったっぺ。

 マッ缶マ◌クスコーヒーを飲んでいたにも関わらず、これが青春の味なんだっぺか……


 コンビニの横を通り過ぎる時に耳障りな声が聞こえてきたっぺ。


「見なよ、シャイアン粕谷剛

 栃木兄弟が泣きながら駄菓子を食べているよ !

 ボクちゃん達が食べている高級チョコフラッペとは大違いですねぇ~ 」


 鷺田脛夫さぎだ すねおが指を指しながら、オラ達をバカにしているべ。

 乱暴者のシャイアンも腹が立つけど、それ以上に鷺田サギにはムカつくんだべ。

 家が金持ちなだけで何が偉いんだっぺ。

 オラ達が無視して通り過ぎようとしたら、それ以上はからんでくるこてが無かったから不思議に思っていたら、サギは別のターゲット獲物を見つけたのか嫌らしい笑みを浮かべていた。

 サギの見ていた方を見ると……オラ達の宿敵、茨城恭介がで歩いて来たんだべ。

 いつもは、必ず幼馴染みの内の誰かが一緒に居るのに珍しいんだっぺ。


 サギも茨城恭介も身体は小さな方で集会などで整列すると前の方に並ぶ二人。

 微妙な差でサギが茨城恭介の前に並ぶ。

 普段、茨城恭介の周りに女の子達が居るからか、 茨城恭介に絡むことが無かったサギ。

 おそらくは、クラスメイトの女の子達から嫌われたく無いのだろうことがわかる。


 いつも嫌味ばかり言う鷺田脛夫サギと人当たりの良い茨城恭介

 どちらかを選ぶなら、『茨城恭介』と誰もが言うんだっぺ !


「おい、田舎っぺ野郎……ボクちゃん達に挨拶も無く素通りかよ !」


 サギは因縁を付けて、茨城恭介の元に歩いて行ったべ……珍しく一人で。

 茨城恭介になら一人でもと思っているのだろう…………バカな奴なんだっぺ。

 何故、オラ達が扱いしているか解らないんだっぺか !?


 サギを無視して通り過ぎようとした茨城恭介をと勘違いしたサギは、言ってはいけない言葉を出してしまった……


「田舎っぺ野郎……ボクちゃんの舎弟にしてやるから、お前の幼馴染み全員寄越せ !

 ボクちゃん達の女にしてやるから感謝しろよ !」


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