【栃木雄仁（とちぎゆうじ）side】

　バレンタインデー

　生まれてから母ちゃん以外から貰ったことが無い憎っきイベントだっぺよ！

　それは親友の孝司（こうじ）も一緒だっぺ。

　おそらく、我等が最大のライバルである茨城恭介は幼馴染みだけで無く、他の女子からもバレンタインチョコを貰えるだろう。

　ちょっとだけ顔が良いからと云って、世の中理不尽だっぺ。

　奴の幼馴染みなどは、オラと孝司を兄弟などと言うが、れっきとした他人だっぺ。

　苗字が一緒なだけで、顔の造作も違うのに皆が納得してしまった、解せぬ！

　孝司と一緒にスーパーに来た。

　仕込みをするために、良いブツがないか見に来たのだが……

「高いっぺ！たかが、チョコなのに凄く高いっぺ！」

　孝司が騒いでいるように確かに高い！

　これでは、沢山のチョコを買ってから自分たちの下駄箱や机の下にチョコを沢山、仕込めないだっぺ！

　それに、バレンタインチョコのコーナーには、女子が途切れることなく居るから、なかなか買えに行けないんだっぺ。

　自分たちが買ったチョコを仕込んだことが、バレたら……

　栃木イズナンバーワンなんだっぺ！

　茨城だけには負けたく無いんだっぺよ！

　隙を見て、孝司と一緒に一個だけチョコをゲットしたっぺ。

　自分たちで用意したチョコだから、お返しを考える必要が無いのは楽だけど……何故か、虚（むな）しくなるから考えるのをやめた。

　いよいよ、明日はバレンタインデー本番の日！

　オラ達が本命チョコを貰ったことにして、周りの奴等を見返してやるんだっぺよ！

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