妖姫の紗々姫は、魔導士の秘密を握る
蘇 陶華
第1話 妖姫の推し活で、魔導士の秘密を知る
僕は、妖の姫。紗々姫の侍従、有と言います。多分、歳の頃は、妖の姫と同じ齢かと思います。妖とはいえ、天子様の可愛い一人娘なので、僕は、身を粉にして、尽くしていますが、怖いもの知らずの姫君が、最近、推し活を始めました。妖器の詰まった三華の塔での、かくれんぼうより、嫌な事があります。姫が、大陸から来た怪しい魔導士に一目惚れしてしまい、日夜、追いかけ、魔導士が天子様のいる朝廷で、過ごせるように活動しているのです。僕が、こんなに尽くしているのに、髪の長い女人みたいな顔をした魔導士の後をついては、長い舌をチロチロして、興奮しているのが許せないのです。しかも、魔導士の絵姿を描かせ、署名を描かせては、寝所に侍らせ、耳まで、避けた口を緩めて、笑っているのです。
「なぁ・・有よ。魔導士の瑠璃光様の心を、我が物にするには、どうしたらいいと思う?」
天子様に逢いに来た魔導士と仲良くなる方法を僕に聞くのです。
「思うようにしたいのですか?」
僕は、不機嫌に聞いた。あんな生っちょろい奴の何処がいいのか、僕には、わかりません。それなのに、僕に、仲良くなる方法を聞くのです。
「あの瑠璃光には、紫鳳という式神がいて、すんごく仲がいいそうですよ」
巷で聞いた噂を、紗々姫様に吹き込んだ。噂によると、瑠璃光は、女性に興味がないらしい。
「残念ですけど、男が好きみたいです」
紗々姫様を諦めさせたい。僕は、その一心で、巷の噂を告げた。
「姫様は、男ではないので、瑠璃光のお目に留まりません」
「何と!」
紗々姫様が、がっかりするかと思いましたが、予想は外れたのです。意外に、紗々姫様は、目を輝かせ、耳まで、避けた大きな口から荒く息を吐いて、興奮したのです。
「今流行りの、ジェンダーレスか。性別など関係ない。朝廷の者から、見本を示さなければならぬ」
紗々姫様は、何処から、聞いたのか、性別の壁を取り外す事で、我が国を開けた国として、魔導士に、見聞を広めてもらうと離し始めたのです。
「姫様。それは、朝廷の中でも、認めるという事でしょうか?」
「魔導士様の秘密は、隠しておいたら、誰かが、弱みとして、悪事に利用するかもしれん。秘密は、秘密にして置かない方がいいからの」
結局、魔導士が女性に興味がなく、男が好きという秘密も、我が国の常識とする紗々姫様の推し活に、僕は、負けてしまいそうです。秘密を弱みとし握ろうとするより、紗々姫様は、受け入れる事で、魔導士のそばに行こうとするのが、悔しくてありません。
「有よ」
遠くから、眺めているだけの僕を見つけて、魔導士は言いました。
「そんなに、重い焦がれているなら、願いを叶えてやるぞ」
両手で、韻を結び、何かを呟くと、僕の体は、一瞬のうちに熱くなった。
「え?ぇ?」
気がつくと、僕は、紗々姫様の帯に挟まる扇子と化していた。
「秘密だぞ。ほんの一時、一緒に過ごせ」
ほんの一時っだけだったけど、僕は、紗々姫様の体に、そっと触れる事ができた。
妖姫の紗々姫は、魔導士の秘密を握る 蘇 陶華 @sotouka
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