第6話

アリスは、大人しい少女だった。

本を読むことが大好きで、よく空想の世界に入り浸っては、姉に、その空想の中での出来事を話して聞いて貰っていた。


姉は、またか。と、眉根を寄せながら、それで、どうなったの?とアリスに尋ねる。


アリスは、空想の世界の生き物がこう言ったから、私はその通りにしなければいけないの。

と、答えた。


それは、不可解で頓珍漢な話で、しばしば姉は自分の妹は変な子だと思っていた。

本当のところ、アリスの空想の世界の話にはうんざりしていた。


アリスは、本ばかり読んでいないで、もっと外に出て色んな物を見るべきだとも考えていた。

家にじっと引き込もって本ばかり読んでいるから、空想の世界の話ばかりするのだと。

外に出て、色んな世界を見て触れて、友達やボーイフレンドを作ってお喋りすれば、もっと楽しいのに。

そう考えていた。


しかし、アリスは、友達は空想の世界にたくさんいるの。チェシャ猫にお茶会の帽子屋、蜥蜴のビルにハートの女王。ね?みんなとっても素敵なのよ!!と答えるばかりで、ちっとも外に出ようとはしなかった。


姉は、それを母親に相談したことがあったが、その母親は義理の母親で、幼少の頃、事故でなくなった両親の代わりに二人を引き取ってくれた叔父夫婦だった。


叔父夫婦は、姉の話には特に気に止める事もなく、もう少しアリスが大きくなれば、自然と外に出て遊ぶようになるだろうと、掛け合ってくれなかった。


そこで、姉は、叔父夫婦の息子、義理の兄に相談したのだが、僕達子供の考えだけでは上手い事出来るよしもないだろうと、二人額を寄せて悩むのであった。


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