第5話

少女は思った。

最初はジャバウォッキー。四肢を捥がれ血の海に浮かんでいた。

次は、トカゲのビル。鋭利な刃物のようなモノで内蔵を抉られて絶命していた。

裁判所の床は、ビルから流れ出た血で血溜まりが広がっていた。

「誰がこんな酷い事を……。」

少女は、呆然と立ち尽くしていたが、ふと、あるものに目を奪われた。それは、紛れもない獣の足跡。血に濡れた足で慌ててかけ去ったのか点々と続き、途中で途切れてしまっている。

獣の足跡は、そう大きくはない。


まさか……。


いや、そんな筈ない。彼がビルを殺す理由がない。

何かの間違いだ。

少女は、脳内で葛藤を続ける。

と、後ろで派手に扉の開く音がした。


!!!


「蜥蜴のビルが死んだ!!」

「アリスが殺した!!」

追ってきたシロウサギが、甲高い声で叫ぶ。


「違うの!!私じゃないの!!」


シロウサギは、その長い耳をぴくぴくさせて、また叫ぶ。

「アリスを捕まえて!!」

「アリスを裁判に!!」


アリスは、堪らなくなってシロウサギをはね除け裁判所を飛び出した。


森の中を駆ける。

どうしよう。

シロウサギは、話を聞いてくれない。

私は、何もしていないのに。


頭が痛い。

お腹が痛い。

眩暈がする。


兎に角、逃げなきゃ。

何処へ?


そうだ!!

女王様のお城へ!!

女王さまなら私の話を聞いてくれる!!


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