第14話

 散々初夏初夏言ったけど、世間様はまだ六月の頭で、梅雨入りだってしていないというから驚きだ。


 あれからなんだかんだあって、僕は自転車に乗れるようになった。

 一方テールはと言うと一向にうまくなれず、すっかりいじけてしまった。


 自分だけ仲間はずれにされたようで嫌だったのかもしれない。

 なんとなくわかる気がした。


 ともあれ、むくれたテールに半ば八つ当たり気味にプールへ連れいけと急かされた僕は、念願叶って二人乗りを果たした。


 ……までは良かったものの、坂道の多さに早くも後悔し始めていた。


「ねぇ、僕らが初めて会った日のこと、覚えてる?」


 もう何度目かの上り坂。

 テコでも降りないテールのために、僕は立ちこぎで長い坂を登っていく。


 気晴らしになんとなく口を開くと、僕のお腹に回された腕が大げさにビクリと震えた。


「あの時も、テールはツインテールだったよね?」


 ちょっぴり曇った小雨の日、とくにあてもなく歩いていた僕は、ふと立ち寄った服屋でツインテールの店員さんに出会った。


 『その髪型似合ってますね』とからかうように笑った僕に、テールは恥ずかしそうに目をそむけた。


 それが僕らの出会いだった。


 けれど、今思えばあれはおかしな話だ。

 テールは僕と二人きりの時にしかツインテールにしないし、あの服屋さんでもそれは同じだ。


 どうして、あの日だけはツインテールだったんだろう?



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