第10話

 昼ごはんを買って帰ると、玄関に君の靴があった。

 けれど、君の姿はない。


「テール?」


 リビングにも台所にも、僕の部屋にもいなかった。

 ひとまず洗面所兼脱衣所へ行くことにすると、風呂場の扉が開いていた。


「テール? 風呂ならもう洗ったけどっ……!?」


 半身でのぞき込むと、風呂場の中の鏡の前で、水着姿の君が背中のホックをとめているところだった。

 気づいた君はみるみるうちに真っ赤になって、磨りガラスの戸をバンと閉めた。


「……ごめん」


 テールなりに、気にかけてくれていたらしい。淡い花柄のセパレートは、まぶしいくらい似合っていた。



────────────────────────────────────

この小説のトップページ(表紙)または最新話のページの『★で称える』の+ボタンをいっぱい押したり、ハートを押したりして応援していただけるととてもうれしいです!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る