第4話

 いい加減、僕の恋人について話そうと思う。


 朝起きたりバイトから帰ってきたりすると、いたりいなかったりする彼女を、なんとなく僕はと呼んでいる。

 ちなみに僕はだ。


 当たり前だけど、人前では普通に本名で呼び合う。

 だからこれは僕らの間だけの愛称のようなものだ。


 さて、今までちゃんと言わなかったけど、テールは正確には同居人ではない。

 そう、僕らは同棲していない。

 そういうことになっているだけだ。


 というのもテールの実家はここからほど近く、テールの職場も実家に近い。

 なんならホフク前進で行けるくらいだ。


 なのでテールは就職後も一人暮らしを始める必要性がなく、というかそんなお金もなく、実家じゃばつが悪いので僕の家に半ば居候している。


 そしてテールがお母さんの小言から逃れるため、体面上僕らはこの賃貸マンションに同棲をしている。


 ……ことになっている。


 だから実際、家賃を払っているのは僕一人だし、テール専用の部屋や私物があるわけでもない。


 つまるところ、同棲のカケラもない。


 ……のだが。本人はあまり気にしていないらしく、いつもいつの間にかいて、いつの間にか帰っていく。

 普通に訪問することは珍しい。

 というかほぼない。


 話しかけても返事が返ってくるのは稀だし、ちょっかいをかけて無視されたことは一度や二度じゃ収まらない。

 へそを曲げると中々機嫌を直してくれないし、連絡もなしに一週間以上来ないこともある。

 そのくせ寂しがり屋で、話しかけないと服を無言でくいくい引っぱってきたりする。


 ケンカをしたあとなんかは、僕の方が意地を張って無視することもある。

 するとテールもムキになって、破れるんじゃないかってくらい服を引っぱる。それでも無関心を決め込むと、テールはしゅんとなって、僕の寝室に立て籠もる。


 そんなテールが可愛くて、愛おしくて、結局いつも僕の方から折れてしまうのだ。


 なんだかんだで僕は、テールの尻に敷かれてしまっているのかもしれない。



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