第3話
僕んちの台所にて、銀のボウルを未だにシャカシャカやっている君。
そばには、ふうの切られたホットケーキミックス。
「ホットケーキ作ってるの?」
コクリと小さくうなずいた気がする。
怒っているならここらで拳が飛んでくるので、単に手が離せないだけらしい。
「僕の分ある?」
今度ははっきり首を振る。
ツインテールがでんでんだいこみたいに控えめに舞い上がった。
どうしてか、僕が頼むと決まって断られてしまう。
そもそも、味見するたび顔をしかめている姿をたまに見るくらいで、こうして台所に立っていること自体珍しいのだ。
「今日はどうしたの? またいつもの気まぐれ?」
言いながら顔をのぞき込むと、ぷいとそっぽを向かれてしまう。
どうやら怒らせてしまったらしく、生クリームをシャカシャカやる手が途端に雑になる。
変に力を込めすぎて、ガリガリ底を引っかく音が混じり出した。
付き合い始めてそこそこ経つ僕にも、女心はわからない。
とりあえず、今はそっとしておくことにした。
その後、君がトイレに引っ込んだタイミングでこっそり台所をのぞき込むと、黒焦げになったホットケーキが、歯型付きのまま置いてあった。
────────────────────────────────────
この小説のトップページ(表紙)または最新話のページの『★で称える』の+ボタンをいっぱい押したり、ハートを押したりして応援していただけるととてもうれしいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます