03 勇者の姪って……俺の姪!?
拝啓、旅の仲間たちへ。
平民出身、両親が死んで天涯孤独の男、バルバロイです。
覚えていらっしゃいますでしょうか。
覚えていらっしゃいましたら、助けに来てください。
よく分からない場所にいるからとりあえずは落ち着こうと思ってますが、とてつもなく不安なので、可能であれば早めに助けてください。
「いやぁ! 勇者様と会えるだなんて思っていませんでした!」
「本当にそうですな! 感動を抑えるので必死ですとも」
貴族みたいな身なりの小太り二人が手を揉みながらそう言う。
ここはどこだ!! 本当に! どこだよ!!! 誰だよコイツラ!
分からん所で目を覚ましたと思ったら、男たちに捕まえられてさ。
次は城の広間につれてこられてさ! 着替えさせられてさ……。
「魔王と戦ってたはずだよな、俺……。それがなんで……」
「!! そうです! 勇者様は魔王を倒したのです!!」
「それで封印をされたのです! 覚えていらっしゃいますか!?」
「ええぇ? 覚えて……って、封印?」
魔王を倒して封印された?
何いってんだ、魔王は確かに倒した──いや、待て、本当にそうか?
思い出せ。そして、ついでに情報の整理をしよう。
「勇者様……そんな両手をこめかみに当ててなにを……」
「混乱されてるんだ。そっとしておこう」
俺は魔王と戦って倒したハズだ。そのハズだ。
まだ、感触が手に残っている。数分前のように思い出せる。
倒して……異変に気付いたんだ。たしか。
深奥の間から出ようとして、振り返ったら──魔王の顔が目前に飛んで……。
「……アレで封印って……ええ?」
キレイに生え揃った歯、色の濃い紫色の舌根。間違いない。鮮明に覚えてる。
そして目を覚ましたら……こんな場所に連れてこられた、と。
あー、思い出した思い出した。最後の最後でドジったと思ったんだよ。
で、まぁ、記憶が飛んでいて、体も万全ってことはだ。
「二人の言う通り、俺は封印されたのかもしらんな」
「その封印が今朝、解けたんです! いやぁ~! 長い間眠られていたんですよ!」
「へー」
長い間って言っても、数日とかかな。魔族と戦った後は3日は寝込むしな。
あ、でも、封印か。数ヶ月とか? 一年とかはさすがに経ってないだろう。
「あと、そのずっと言ってる
「はい! 勇者様。勇者様のことを勇者様と呼んでおります、勇者様」
「頭痛くなってきた……」
「封印の影響ですか!? ご無理はなさらず……」
お前のせいだよ、お前の!
とりあえず、俺は誰かに勘違いされてるらしい。ユーシャ、聞いたことない名前だ。
「俺はユーシャじゃないです」
「魔王を殺したのでしょう?」
「魔王は倒しましたが」
「それで、ロイという名前ではないですか?」
「まぁ……」バルバロイで、愛称はロイだな。「そう呼ばれてるな」
「では、ロイ・エンペリオ様でお間違いないですね」
誰だよ、それ!! 思わず天を仰ぎ見てしまった。綺麗な天井だね、いいね。
ロイ・エンペリオ……!? なんだその貴族みたいな名前はよォ!
俺はただのバルバロイだっての。どこで人間違いが起きてんだ?
「容姿に差異があるから何事かと思いましたが、大丈夫そうですな、ハッハッハ」
「はぁ……」
まぁ、話はなんとなく分かった。
封印された俺をどこかの貴族領地まで引っ張ってきたのだろう。
で、魔王は倒せたらしい。あそこまでして倒せてなかったらどうしようかと思った。
ここまでは順調なんだが……そのおっちゃんも気にしてる容姿の件だ。
「なんで、俺は縮んでるんだ……?」
見てくれはただの13歳くらいのガキだ。声変わりも終わってないような奴な。
「身体のことを調べるために、王城内の
「あるかな……?」
そいつに会えば、色々と分かるのか? 助かるー。全部教えてくれ。
置いてけぼりくらってんだ。このままじゃ、魔王を倒した余韻にも浸れない。
「そのあるかなってのは……ちなみに何をする人で?」
「鑑定をする者のことです、勇者さま」
「勇者さまが魔王を倒していただいたおかげで、剣の時代は終わり、魔法の時代へとなりました。その際に生まれた職業が、
剣の時代から魔法の時代? へぇー……。なに言ってるんだろう。
貴族の連中の言うことは分からないから、理解しようとするのは無駄か。
「
「魔力は……まぁ、確かに、必要か」
魔力。魔法使いや戦士が力を発揮する際に消費をするモノだ。
生命力は生きるために必要な力で、魔力は戦うために必要な力だ。
ただ、モンスターや魔族は魔力が生命力の役割を担ってる。
生きるためにも魔力を消費し、戦うためにも魔力を消費する。
だから、彼らは魔力の含有量が多くて強いのだ。
(ようやく俺でも知ってる話が出てきて安心した)
魔王の術中かって思うくらい、話が噛み合わなかったからな。
この調子で「あ、そういうことなのね!」と分かる一言や二言くらい来てもらってもいいのだよ? 未だに置いてけぼりだからね。
そうしていると、このでかい部屋の外で何やら声が聞こえてきた。
「エンペリオ様がお見えになりました」
「ああ、入りたまえ」
誰か来たのか。
振り向くと扉を従卒が開いて、一人の女性が入ってきた。
「失礼します! 王宮第二書庫の管理をしているガルー・フォン・エンペリオです!」
「おー……」
入ってきたのは金色で縁取られている黒い服に身を包み、その上から
桃紅色の目はぱっちりと大きく見開き、活発な少女らしさを感じさせる。ただ、金色の髪が手入れされていない状態で腰辺りまで伸びている。
うーん、貴族とは言えん見た目。髪型とか特にそうだ。あまり外に出ていないんだろうな。
イイトコでどこかの令嬢とかかな? 箱入り娘とかってこんな感じなのかね。
「鑑定具は持ってきたかね?」
「もちろんです」手提げ袋を揺らして答える。「それでっ、勇者さまはどこに……?」
「貴殿の目の前にいるのが、勇者様だ」
こっちを見てきたので、手をフリフリしておいた。
「勇者さま……?」
「らしい。違うって言ってるんだけど。鑑定? してくれるんでしょ?」
椅子の背もたれを使って振り返っていると、わなわなし始めた。
そして、バッと顔を上げるとギュッと手を掴んできた。
「えーー、かわいい~……! 勇者ごっこしてるんですか~? そうだよね、勇者さまのこと好きだよね、分かる分かる。だって、カッコいいもんね! 英雄だしね!」
「えー……あー、うん、まぁ、そんな感じ」
「エンペリオ。落ち着け、本物の勇者様だ」
「え”っ”?」
おじさんにそう言われ、もう一度俺の顔を見てきた。
「えーとですね……勇者様は金髪で藍色の瞳、背丈は180cmもあるんですよ?」
「黒髪で金色の目で今の背丈は君よりも小さいね。不思議だねえ」
困惑した顔を使用人にも向け、小さく「ジョーク……?」と呟く。
思ったような反応がもらえないことが分かると、再度こちらを見てきた。
「こんなちんちくりんが! 勇者さまな訳がないでしょう!」
「そーだそーだ! 言ってやれ! いや、ちんちくりんは訂正しろ!」
「この……えーと、可愛げのある!」
「そうだな? ちんちくりんは失礼だよな?」
なんだ話が分かるやつがいるじゃないか。
そーだそーだ、俺はユーシャって奴じゃない!
まぁ、俺が散々否定したからか、2人で抗議しても取り合ってくれなかった。
「勇者様、紹介しましょう。彼女が先ほど話に上がった
「
「よろしく~」
って、ん?
「エンペリオ?」
エンペリオってさっきユーシャの話で出てきたよな?
「お気づきになられましたか、彼女は勇者様の血縁関係の者なんですよ」
「……そうなん?」
「はいっ! 私は、勇者さまの姪にあたります!」と敬礼された。
「へえ」
頬杖をついて応えたが、その頬杖がズレた。
「はぁ……?」
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