魔法使いの相棒様

レモン味の林檎

第1話 相棒と

今となっては数日前の話だが私は昔、聖女としてこの国を平和に導こうと努力した。小さな赤い小鳥の相棒と一緒に人々を癒そうと日々頑張っていたのだ。しかしそれをよく思わない家族は王子と手を組み、私の居場所さえも消してしまおうと冤罪を擦り付けた。よって私は浮気ばっかりの猫かぶり女というレッテルを貼られてしまったのだ。その後は王子がずっと私に聖女の資格がないことを語り、皆を騙してきたという大罪を犯したということで処刑にすると言い渡した。私が必死に嘘だということを証明しようとすると妹が泣き始め、親と兄は耳を傾けるな!洗脳されるぞ!と言いだしたおかげで誰にも耳を傾けて貰えなかった。あまりの急展開にやがて脳が追いつけず絶望してしまった私は抵抗するのを諦めた。だけど私が兵士たちに連行されようとした瞬間、肩でずっと大人しくしてくれた相棒が鳴き出したのだ。ピィピィと鳴くにつれて王子と家族は熱い熱いと苦しみ始めた。さすがにこれ以上物事を大事にしたくなかった私はもういいんだよって声をかけたの。そしたら相棒は真の姿を人々の前で現してしまったのだ。相棒の正体はこの国の象徴である不死鳥だからきっと周りの人も驚いたに違いない。だって神獣として崇めている不死鳥が聖女の資格を持っていない人を守っているから。本来なら家族と王子が苦しんでるから気分がスッキリして元気を取り戻せるのかもしれないけど私は酷く落ち込んでいた。いくら家族と親が苦しみ続けようが私の居場所はもう戻らないのだ。ずっと私を無能扱いする家族に、私を消したいと願っていた王子と今さら一緒に暮らしたくもない。貴族と町の人々でさえもう私のイメージは最低な存在になってしまったのだ。そしたら相棒は

「もうそんなことを考えるのは辞めなさい。貴方はわたくしが認めた相棒なのですから。彼らの思惑通りになりたくないでしょう?」

「……うん。なりたくないよピーちゃん。」

「なっ…!!小鳥の姿の時の名前は辞めなさい!!そんな呼び方するのは貴方だけよゼラニウム!! 」

「えへへ…でも元気出たよ。私はもうここに居られないから違う場所に行くね。」

「はぁ…わたくしも着いていきますわ。」

「ありがとうフェル。」

「何を当たり前のことを…相棒なのですから当然のことです。」

「そうだね。なんだか友達みたい!」

「友達ですよ。」

いつの間にか周りのことを気にせず話し続けていた。だけど親たちが騒ぎ出しそうだから魔法で呪文を唱えずにワープしてしまった。ワープした先の森についてから気づいてしまったのだ。他の人は呪文を唱えないと魔法が使えないという事実に。だけどもうその過ちさえどうでもいいのだ。

「…この先どうするつもりなのですか?」

「私ね…別人になろうと思ってるんだ。そしてこの森で暮らして行こうと思うの。」

「そうですか。ならこれからは貴方の大好きな魔法を使うことが出来ますね。」

「うん。凄い楽しみ!!」

聖女だった頃は普通の魔法を使うことが禁じられていた。実際に人々を普通の魔法のおかげで助けることができた日があったのだが、作業が終わったあとは周りから嫌になるほど魔女みたいだと言われたな。あとは…兄に見知らぬ土地で監禁されかけたのもその後だった気がする。まぁ魔法のおかげで5秒で脱出したけど。でも広々とした心地の良い環境で魔法を使えるのはとても嬉しい。

「もう光属性の魔法は懲り懲りだな。」

「聖女専用の魔法でしたっけ。しばらく使う機会も無いでしょう。」

「こんな森の中だしね。」


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