第12話(後編)部下に尊敬される ボスに呼び出される
「この度はありがとうございました。本当に、本当に感謝以外の言葉がみつかりませぬなぁ!!」
クンチャを倒した後、俺たちが少しだけ進んだところに村の子どもたちが手を縛られて捕まっていた。そいつらの縄を解いたら、未来の主人公のダンが、魔法で村に連れて行った。それが終わるとダンはついでと言うように俺たちと共に、魔法で村に飛んだ。
それで今は村長とか周りの村人たちに感謝されているところだ。
「いやぁ、わしゃ長いこと生きた甲斐があったわい。こんなべっぴんさんに救われるなんて、ああおいたわしや女神様」
誰が女神様だよ。悪い気しねえけど手をすりすり擦りながら拝むのはやめてくれ。なんか変な宗教臭く見えるから。あとおいたわしやの使い方、合ってる?
「うぅぅう〜〜……天国のバアさんや、ワシは今、女神様と共にいらっしゃいますぞ」
いやそれ大仰に褒めすぎ。てかさっきからそのバアさんいるから。貴方の伴侶死んでないから!! 今もなお貴方の至近距離で凝視してるから!!
「……じいさんや?」
その声を聞いた瞬間、村長の肩がビクン、と震えた。
あ〜こりゃし〜らねっと。
後ろを向き、村長たちを後にした。
感謝しているのは村長だけではなかった。
子どもたちの親なのだろうか。女性、男性問わず様々な方々が俺たちに向けてお礼を言い回っていた。
子どもが連れていた時、何を思ったのか考えると、これは素直によかったと思える。
「お、おい……フローの姉貴」
ぎこちなく俺を呼ぶ声が聞こえてきたから振り向くと、そこには少し気恥ずかしそうに頬をポリポリ掻いているダンとその後ろにボヤンがいた。
なんだ? また文句でも言いにきたのか?
「あの、よ……おの……ありが……」
何だモジモジとして。おしっこでもしたいのか? 何て思ったけど、今の俺がそれを言うのは失礼だろう。
こういう下の問題についての質問ってのは、男女問わずしてはいけないというのが、俺の見解。
そんなことを考えていたら、当の本人がいきなり背筋を伸ばして、目を吊り上げた。
「今回はよくやってくれたが次はねえからな!!」
何だそのセリフは。一昔前のツンデレヒロインみたいなこと言うなや。
「オカシラ!!」
うおっ、ビックリした。なんか久しぶりに聞いたぞゴンの大きな声。
「やりましたね!! これで今日の寝床と食料は確保しました!! 俺たちは村を助けてやったんです!!! 一宿一飯どころか一年ここにいても良いことをしたんです!!」
いや、お前そういうこと大声で言うのやめなさいよ。さっきまでの村人からの好感度一気に下がるでしょ。
注意しようと思ったけど、こいつこれで意外とこすい所あるからなぁ。注意した時に、わざとそう言いました、とか言われるとさらに困る。
「お、オカシラ……」
なんか弱々しい爽やかな青少年の声がしたと思ったらミックだった。冗談混じりでそのイケメン顔が台無しだぞ、とか言おうかなと思ったけど、それセクハラだからやめた。
「どうした、敵はもう始末したぞ」
ミックがこういう態度を取る原因は分かっている。クンチャのせいだ。あいつと一緒に行動した時があったのかもしれないが、その時に手酷くやられたみたいだなこりゃ。
何をされたかは分からないし知りたくもないし想像したくもない。だが、ゲームしてた時、平気で仲間を巻き込むアレを見てたら、ミックがこんなに怯えるのは分かる。
「あの……お……おれ……その、さっき……く……く、ク、ク、ク、クン、チャに……」
ヤバい、目の焦点が微妙に合わなくなってきている。
ス……
なんとなく咄嗟に、ミックの手を優しく握る。うん、できるだけ優しくしているつもりだが、大丈夫か? 変に驚かせちまったか?
「オカシラ」
見ると、ミックの目の焦点は元に戻っていた。
「大丈夫だ」
「へ?」
「もう、あいつはいない。ちゃんと始末したのをお前も見たはずだ」
「は、はい」
「だから大丈夫だ」
本当はこういう時って抱きしめた方が良いのかもしれないが、すまんな。ちょっと元の俺を考えたら、絵面が良くてもなんかどこか出来ない。
……ヒック……ヒック……ヒック……
おいおい、マジかよいきなり泣き出したぞ。
「お、オガジラ……すいばぜん」
もう鼻水や涙をメチャクチャ出して顔がグシャグシャになっていた。やっぱりあいつそんなに怖かったのか。
しかし、次に飛び出してきた言葉は予想外の言葉だった。
「おれ……おれ……ずっど…………ざっぎまでオガシラのごど……ずっと舐めてた」
「ん? どういうことだ?」
聞き返すと、ミックはゴシゴシと涙袖で拭いた。
「俺、ずっとオカシラが女だからって心のどこかで馬鹿にしていました。だけどさっきの戦闘を見て、分かりました。オカシラは最強です」
お、おお……女だからって思ってたんだ。
そんでいきなり最強って高く評価しすぎじゃない?
「俺、オカシラに一生ついていきます!!」
そう言ってミックは勢いよく頭を下げた。
それを俺は、まるで一昔前のヤンキーみたいな謝り方をするな。モヒカンとかリーゼントとか似合いそうだな今のコイツ。
「あ、あの……」
「ん?」
振り向くと、そこにはモジモジした態度のボヤンがいた。
「何だ?」
そう聞いてもボヤンはモジモジして、何も言わない。こいつ、こういう所あるんだよな子どもの時は。何回言いたそうに話しかけてくるけど、反応すると何でもないとか、呼んでみただけとか言ってくる。なんかイラっとする態度なんだよなぁ。
まあ成長すると、今とはある意味違うことになるけどな。めちゃインテリになるし。
「こ、こ、こ、こ、これ……」
何やら大きな袋を持っている。これを受け取って欲しいということか?
「お、おお。サンキューな」
とりあえず受け取り中身を見た。
そこには、多くの金貨があった。
「は?」
ボヤンを見る。ボヤンは手をモジモジさせてこちらを見ていた。
え? な、よんで今こんなのが手に入ったの? え? コイツもしかして盗んだ?
そんなことを考えていると、ボヤンの方から口を開いた。
「こ、これ……さっき倒した人の賞金……」
それを聞いて思い出した。そういえばゲームでも町や村に依頼書の看板があり、そいつを倒したり、指定のアイテムを手に入れたりすると報酬がもらえるんだった。
そうか、クンチャも賞金首の一人だったのか。それならこの報酬も納得だ。
「あ、あとコレも……」
ボヤンは何か長い漆黒の縄を後ろから出した。この武器は見たことが無い。
「えっと……さっき倒した人の武器が珍しい形状の造りをしていたのを、この村の武器生成ができる武器屋さんが見て、新しい作品の一人目として使ってくれって」
マジかよ、図らずともすごい武器を手に入れちまったぞ。
「えっと、持ち主だけにしか出来ないことらしいんだけど、この長い黒縄に縮むことを命令すると、縮むんだって」
「なるほど……」
ボヤンからその漆黒の鞭を見る。所々がピカピカ光っており、コレは金属光沢の物だと分かった。
金属がこんなに混じって、硬い且つしなりもある。こんな武器初めてだ。ゲームをしていた時も見つけられなかった。
本当に受け取っていいのかとさえ思ってしまう。だがもらう。
縮め
そう思うと、一瞬で漆黒の鞭は縮んで、腰につけられるようなコンパクトな長さになった。
「なるほどこりゃいい。ボヤン、サンキューな」
「は、はい!!」
礼を言っただけなのに、背筋をピント伸ばしてお辞儀。コレではまるでこっちが威圧しているみたいに見える。
「お、オカシラオカシラぁ!!」
その時、全然聞いたことがない男性の声が聞こえてきた。見ると格好からして俺たちと同じ所属の皇族であることは間違いない。
「者の外にいます!!」
者の外にいますぅ?
「何者だ?」
「えっと……すみません。それがさっきからフローを出せフローを出せと……多分、他のおなじ所属の盗賊団なのではないでしょうか」
その可能性は大いにある。クンチャのような他の傘下組織の可能性は大きい。
「分かった、今行く」
言い終わる時には、もう走っていた。
こういうのは速く行かなければならない。
なぜならこういう暴力組織は、待たせてはいけないからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます