第12話(前編)部下に尊敬される ボスに呼び出される
フォロボシタン本部アジトにて
ガシャーーーン!!
「どうなさったのですか!?」
ベイビーヘッドはビビった。なぜならアーサアが大粒の涙を流しているからだ。
口角が思い切り下がり口を開けて、パクパクさせている。まるで陸に釣り上げられて息ができない魚のように、苦しそうでむごい顔であった。
ベイビーヘッドは戦慄する。これは、組織の中で誰かが死んだことを表していた。
「クンチャが……死んだ」
クンチャ、その名前を聞いてベイビーヘッドは安堵したが、その後すぐにゾッとする。
以前からクンチャは問題が多すぎた。度重なる暴走で仲間を殺し民家を襲撃したり、何度かこちらに恨みを増やすようなことをしでかしていた。
そんな組織の一番の問題である厄介者が死んだことで安堵した。そんな奴が死んでも喜ぶことはあってもないし悲しむことも無い。
しかしすぐにベイビーヘッドはゾッとした。クンチャは戦闘に関してはずば抜けている所がある。あの暴走状態はこちらでさえ少し手を焼く。
そんな奴を殺した奴がいることにベイビーヘッドはゾッとしたのだ。
(バカな、アイツは一回でも暴走状態になれば、アーサア様が止めても暴れ回る奴だ。そんな奴を殺すなんて、どんな手を使ったんだ!?)
ベイビーヘッドが興奮している間、アーサアはずっと、うん……うん……と言いながら頷いている。
目をつぶりさめざめと涙を流しながら泣き、宙に向けて頷いている。
ずっとそうしているかと思うと時折、死んだ……死んだんだ……ううぅぅ〜〜……と呻き声をあげて啼泣し始める。
しゃくり上げながら頷き泣く姿は、まるで幼稚園児の様だ。
(こいつ……もしかして組織の一番上の長なのに薬でもキメてんのか?)
腹心の位置にいるベイビーヘッドもそんなことを思うほど、世にも気持ち悪い泣きじゃくる姿であった。
大の大人がするような行為ではない。
常識が全くない餓鬼の姿だった。
「うん……うんうん……そうだよな……うぅ……!!」
(キッショ)
もし、アーサアが心の声が聞けるなら、すでにイビーヘッドの首から上は自慢に転がっている。そうでないから今もベイビーヘッドは心の中で貶す。
「だよな……アイツだよな……アイツが悪いよな…………フロー」
(……は? 誰だ?)
突然、知らない名前が飛び出してきたからベイビーヘッドは、ビックリした。
「ベイビーヘッド、フロー……あいつを呼ぶように伝令させろ」
「えっと……すみません、フローとは誰のことでしょうか」
「ああん!?」
いきなりアーサアは凄んでくる。
「お前そんなことも知らねえのかよぉ!! ザコボッコの団にいた売女のことに決まってんだろうがよぉおおお!!」
「は、はい!! 了解です!! 今すぐ伝令を引き渡せます!!」
子どもの癇癪めいたアーサアの怒鳴りに思わずそう言ってしまったが、ベイビーヘッドはフローが誰だか分かっていなかった。
とりあえず下の奴らにそう指示すれば、誰かが見つかるだろうとも思った。
速くしないとアーサアに殺されてしまうから、ベイビーヘッドは、下の者に伝えるため、部屋から出ていった。
「……はぁ〜……落ち着いた」
ベイビーヘッドが部屋から出て行って間も無く、アーサアは突然正気を取り戻した。
「ベイビーヘッド〜、茶入れ……」
命令しようとしたがベイビーヘッドはいなかった。
「は? 何あいつ……つっかえねえなぁマジで。もう殺すかぁ?」
顔と精神がどこまでも子どもなのに、身体だけが服の下に筋肉を蓄える大人の男性がそこにいた。
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