第14話 性格は態度に現れやすい


「やっときましたかクソ女。もう少しでこの村を馬糞にしてしまうところでしたよ」


 変態の元に向かうと、早速嫌味を言い出した。この嫌味にしても、さっきの鞭打ちや会話からなんとなく思うことがあった。


 でも多分これ言ったら、怒るんだろうなぁ根深く。こういう奴っていつまで経ってもねちっこいところがありそうだからなあ。


「どうしましたか? 馬糞みたいなマヌケ面していないでさっさと馬車に乗ってください」

 

 あ、もういいや。言おう。

 

「先ほどからずっと思っていたが、お前、身なりや顔は丹精で良いが、品性という文字が欠片もないんじゃないか? 今の馬糞にしても先ほどから例えが下品だ。外見の良さだけに頼っていると、言葉遣いもろくに知らない畜生にも劣る肉塊がやはり盗賊なのか。この程度の知能の成金未満のクズしかいない盗賊だな、と思われる危険性があるから気をつけろよ」


「……………………!!!!」


 あ、怒った。これは怒った。目を吊り上げて般若の面みたいになってる。冷静で知的の面影が何一つとして無いなこりゃ。


「……とにかく乗りなさい」


 はいはい、あやまらずスルー決め込む気ですか。まあ、こちらとしては激昂されて村を襲うなんてことになったら大変だし、これで結果オーライ。


「ああ、わかった」


 なんか変な罠が貼っているか注意しながら、俺は周りを観ながら馬車に向かう。

 

 馬車の扉はすでに空いていて中が丸見えだった。少し身を乗り出して馬車の中を見ると普通で安心した。


「罠とか疑ってんのかこのクソ女」


 満面の笑顔のまんまで口汚く責めるんじゃねえよこいつは。


「今さら罠なんてこすい真似するわけねえだろ常識的に考えやがれくださいクソゴミ」

 

 賊が常識を語るのかよ。まあいい、薄気味悪いが乗るか。


 そのまま乗るとすぐに変態も乗ってきた。


「走れ畜生」


 最低な言葉と共に鞭を振るう。


 ヒヒーーーーーーーーーーン!!!!


 鞭が身体に当たると、馬が悲鳴をあげるように嘶く。これを見てもそうだがコイツはとことん趣味が悪い。


 鞭を打たれると馬はいきなり走り出した。


 いきなり走り出すから、馬車も不安定になるのは当たり前だ。ガタンゴトンガタンゴトンといきなり大きく揺れる。


「おい、これ……大丈夫なのか……!?」


「クソご心配する必要はありませんカスクソ女。目的の場所には確実に近づいていますから」

 

 んなこと言ったって……てかこれ、どこに向かって……。


「あ」


 なんてことだ、今気づいてしまった。

 この馬車、窓が真っ黒で何も見えない。

 何も見えないと言うことは、どこに向かっているのか、客席の俺からは全く分からないということだ。


「おやおや? どうなさったのでしょうかカス賊の女頭領。まさか今さら窓の外が全く見えないことに気づいたわけではありませんよね? このような荒い世界に入った人なら誰でも入る前に分かることです。分からなければそいつは下品で知性のかけらも無い淫獣ということでしょうか? それともやはり女の子ですから綺麗な世界しか見ていなかったクソアマちゃんということなのでしょうか? 全く、いやはや、入る前に窓の外が見られないことに気づかないのは、致命的な欠陥品失敗作じゃないですか?」


 こいつのこの嬉々とした最低最悪の煽りと差別発言。そしてさっきから嗤いを堪えきれないというようなニチャニチャ顔を歪ませた満面の笑み。絶対何か企んでいる。


 しかもこの罵倒の軽さは、もう勝ちを確信していると見ても良い。


 その時だ。急に揺れは収まった。


「あ〜ついたようですねー」


 変態はそう言いながら降りた。


 着いた? ここが目的地!? 

 たしかに村からは大分離れたが絶対違う。

 フォロボシタンがこんなに近くにあるわけない。


 ゲームの知識からもそうだがゲームの知識がなくてもなんとなく分かる。


「おやおや、今度は降りないんですねぇ。なるほど人に近い学習能力を持った汚物ですか」


 この言い草、今この場そのものが罠そのものだと、言っているようなものだった。


「降りてきてくださいよ。どうせもう遅いんだから」


 何を考えているのか分からない。もしかしたら地面に足をつけた瞬間、毒が回るような毒沼にしているとか考えてしまう。


「ここまできて、地面とかそこらへんに罠はかかるとか狙撃なんてことは考えてませんよ。そんなこすい罠を考えているならバカ丸出しです。さっさと出てきてください」


 ホントこいつは救いようが無いカスの言い方をする。絶対コイツ嫌われ者だろ今も昔も。なんて言ったらキレた殺しにかかってきそうだから、言うのはやめた。


 仕方ないから俺は馬車の扉を開けて一歩踏み出す……。


「どうしましたか? 降りてきてください。このくらいの人数、お手のものでしょう」


 見ると、周りに何十人も男がいた。全員スーツを着ているが髪型や目つきや持っている鉄パイプ。これらからコイツらが根っからのチンピラだということが分かる。


 何も罠は無いというからなんだと身構えたら、なるほどこういうことか。思わずため息をつきそうになってしまう。


「おや? どうなさったんですか? ひょっとしてつわりでもしましたか? 今から自分の身に起きることに対して」

 

 こいつら……ホントに趣味悪い……徹底的に女を見下すどころかもうただの生殖体だと思ってやがる。幼い頃からそういう教育されてきたんだろうな。女に負けることなんてあってはならない。女は馬鹿で頭が足りないから騙せとか……。


「はぁ……そうだな。可哀想だな、お前ら」


「は?」


 一瞬で声音と顔の皺が増え深まった。

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