第11話(前編)元雑魚キャラ サブストーリーボスを倒す



 


 クンチャ・シットライットンネ


『クンチャ・ハート』という組織の一番上であり『フォロボシタン』の傘下組織である。

そして傘下組織の中で一番強く、傘下組織の中で唯一、次のトップ候補になっている。


 これが攻略本とかに描かれていた、クンチャについての事項だった。


 ゲームをやっていないと、その気持ち悪さは分からない。戦闘以外でも部下を踏みつけにする行動。戦闘でも味方を攻撃する頭の悪さ。本当に外見と攻撃力に全振りしたキャラだった。


 そのキャラが今目の前にいる。


「おいお〜い、なぁんでそんなに俺を拒絶する態度とんだよぉ〜、なあ、なあ!!」


 すると、いきなり右手を空中に掲げた。


 その手には、訳の分からない武器があった。


 刀のような刃物に見えるが、先の部分がゴワゴワモワモワと何か真っ黒な塊があるのだ。夥しい数の毛むくじゃらが集まりくっついたような形。見ようによっては鼻くそみたいだと言うプレイヤーも言う。


 ゆえに『ハナクソの鞭』とか言われている。


「お仕置きだ、お仕置きだぁ〜!!」


 ってそんなこと思ってる場合じゃない。

 

 こいつの武器は単純なもんじゃない!!


「お前ら左に飛べ!!」


 俺のあったことがコイツらに届いたか分からない。だがそれに気を取られている場合じゃない。


 こいつの鞭は、広がる!!


 振り下ろされると同時に、衝撃音が弾け飛ぶ。それと同時に鞭の部分が三つに分かれた。


「んんん!?」


 まずい、真ん中に振られると避けにくくなってしまう。なら、振り下ろす前に攻撃すれば良い!! 


 前に踏み込み、刀に手をかける。


 そのまま斬りつけようと思ったが、刀が抜けない。まずいと思ったが、クンチャは後ろに引いた。


「なんで俺の武器の性能、知ってんのかなぁ!? おんなぁ!!!」


 激怒と共に、クンチャは振り下ろそうとする。まずい、これは避けられない。


「モエル!!」


 ボッ!!!


「ぎぃああああああ!!!」


 クンチャは大袈裟に叫んで、地面に転がり悶え苦しんでいる。


「今のうちだ!!」


 そうだ、今のうちに刀を抜かなきゃ。


 しかし抜こうとしても、刀は動かない。

 

 カタカタ動くばかりだ。まずい、このままだとあの変態が起き上がって攻撃してくる。

 何とかしないと……。


「いい加減に抜けろよ……このばか!!」


 キィン!!


 瞬間、金属が摩擦する音がして刀が抜けた。何か分からないが、黒いオーラを纏っている。とても不気味だが今は攻撃するしかない。もうクンチャは炎を振り解きかけている。ますます攻撃しなければならない。


 駆ける、一直線に討つべき敵に向かう。


 起き上がって来るな起き上がって来るな起き上がって来るな!!


 ズギ……!!!!

 

 は? なんだこの痛……み!? まずい、視界が……揺れ……て……!!


「あれぇ? どうしたのかなぁ女ぁ〜。ダメだよなぁ、女の子はあまりいじめちゃダメだって教わったもんねぇだからすぐ殺さなきゃ!!」


 ヒョウフ!! ザクッ


 風を切るような音が聞こえたかと思うと、何かが刺さるような音がした。


「いってええなぁ!!」


 クンチャのブチ切れながら叫びまわるのが聞こえてくる。

 

 恐らくさっきのは誰かが弓矢を放った音だ。矢が見事にクンチャに当たったんだ。


「てめえええはぁ〜!! ゴンかぁ!?」


 こいつ、ゴンとも知り合いだったのか?

 ていうかゴンは弓を使えたのか。

 

「オカシラから離れろ!!」


 ゴンがそう言った時、俺には聞こえた。


「殺す」


 僅かな声だったが聞こえた。それは暴走する時の台詞だった。

 

 一気に危険レーダーが身体中から鳴り響く。具合とか関係ねえ!! 今すぐこいつをぶっ殺さなきゃならない!!

 

 その時、視界の揺れがおさまった。

 それどころか身体が軽い。

 だからそのまま、クンチャの腕を斬りつけるのは簡単だった。


「は? うわぁぁぉあああ!!」


 よし、混乱しているこのまま……。


「来るなぁああぁぁああぁぁ!!!」


 ぐっ!?


 横殴りに何かの衝撃が胴体に伝わり、吹っ飛ばされた。


 こいつなんてパワーだ。あの見た目に反して長い鞭の最大攻撃ポイントじゃない部分で俺を吹っ飛ばすのかよ。


「フロー!!」


 バカ、よしにもよってダン。お前が来るべきじゃない!! 今すぐ引いてくれ!!

 

「もういい、全員殺す!! 細切りにして遊び殺す!!」


 その瞬間、血飛沫のような赤いものが辺りに飛び散った。


 クンチャが暴走した証拠だと、いうことに、気づいたのは俺だけかもしれなった。


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