第17話 アニメの街
※
翌日。
上井草駅に到着すると、某人気ロボットアニメの銅像が出迎えてくれた。
(……ガ◯ダム像、久しぶりに見たなぁ)
描世さんと待ち合わせしている上井草はアニメの街と言われている。
多くのアニメ作品の聖地になっている他、アニメ制作会社の数も多い。
(……
もしかして……ご両親がアニメ業界関係者、とか?
だとすると、実は天才クリエイター一家なんじゃ!?
(……てか冷静に考えてみたら、家にって……ご両親もいるよな?)
やばい。
菓子折りの一つでも持ってくるべきだったか?
「お待たせ」
「ひゃいっ!?」
急に声を掛けられて変な声が出てしまった。
「……? そんなにびっくりした?」
振り返ると、怪訝そうな顔で俺を見る描世さんが立っていた。
「あ……いや、ごめん。
ちょっと考えてごとしてた」
「そうなんだ。もう、考えはまとまった?」
淡々と言いながら、俺の顔を覗き見る。
意識しているわけではないと思うけど、少し上目遣いのようになっていて可愛らしい。
「ば、ばっちり!」
「そう。じゃあ行きましょうか」
微笑してからくるっと背を向けて、描世は歩き始めた。
俺も直ぐに彼女の隣に並び、彼女の歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いていく。
「今日は時間、作ってくれてありがとう」
「いや、むしろ誘ってくれて嬉しかった」
楽しみで眠れなくなるくらい。
「ほんと? なら、思い切って誘ってよかった。
ちょっと唐突なお誘いだったかなって、思ってたから」
「俺は全然平気。
……そっちは大丈夫だった?
ご両親とか……いきなり家に行ってびっくりしないか?」
「それって……うちの娘に手を出すな~……的な?」
冗談っぽく言いながら、描世さんが微笑する。
「そこまでは考えてなかったな。
どちらかと言うと、いきなり異性を連れて行って、彼氏だと思われたりしないか……とか」
「あ~……ありがちな展開ね。
でも、気にしなくていいんじゃない?」
「いやいや、普通気になるって」
「いないから」
「え?」
いない?
って、え?
それって?
「二人きりだと、いや?」
そういう!?
俺と描世さん、今日二人きりなの!?
別にやましいことを考えてるわけじゃないけど、一気に緊張が走る。
「いやじゃないけど……いいのか?」
「いいって、どうして?」
本当にわからない。
描世の顔はそう語っていた。
こんな純粋な顔を見てしまうと、口にするのも躊躇ってしまう。
「……いや、その……もし間違いが起きたらとか……」
「間違いって……ぁ……」
ここでやっと、何かに気付いたように、描世は足を止めた
そして頬を赤く染める。
互いの目が合って、思わず逸らす。
その初々しい少女のような顔を見て、俺も思わず赤面してしまう。
互いに顔を見られない。
(……何か、言わなくちゃ……)
気まずいわけではないけど……羞恥心から変な雰囲気になってしまった。
でも、上手く言葉が――
「
揺れていた描世さんの視線が真っ直ぐに俺を捉える。
「私を傷付けるようなこと、しないでしょ?
だから、平気」
そして、
「じゃあ、この話はおしまい」
照れ隠しするみたいに歩き始めた。
(……そっか)
俺のこと友達だと思って、信じて呼んでくれたんだもんな。
気持ちを切り替える為、パチパチと――自身の頬を叩く。
そして俺も前を向き描世さんを追った。
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