第12話 遅れて昼食

     ※


「あ……やっと戻ってきた」


 急いで教室に戻ると、舞花を中心にクラスメイトたちが席を囲んでいた。


「優雅く~ん、おっそいじゃ~ん」


「みんな待ってたんだよ?」


 遅れてしまったが、快く迎え入れてもらいながら俺は席へ戻った。


「悪いな、みんな……待たせちゃったみたいで」


「ほんとだよ~。

 俺、めっちゃ腹減っちゃった」


「だね。早く食べよ」


 みんな食事を始める。

 まさかみんなが俺を待ってくれているとは思わなかった。

 それは舞花も同じで。


「食べてなかったんだな」


 減っていないお弁当。

 舞花はまだ、一切口を付けていないようだった。


「待っててくれたのか?」


「べ、別にそういうわけじゃ……。

 ただ、購買でご飯、買えてないんじゃないかって思って……」


「一応、買えはしたんだけどな……」


 持っていたコッペパンを見せる。


「それだけ?」


「他の商品は直ぐに売り切れたみたいでさ」


「……足りないでしょ?」


 舞花が自分のお弁当を俺に差し出す。


「いいのか?」


「……平気。ちょっと多めに作ってきたから」


「ありがとな、舞花」


 渡してもらった箸を受け取り、おかずを一口いただく。


「めっちゃ美味い」


「……そ」


 素っ気なさそうに言って、舞花は顔を背けた。

 怒っているのだろうか?

 だが、俺の位置からは表情を確認することはできない。


「え~~~いいな優雅くん!

 美鈴さん、あたしも貰っていい?」


「あ~、ならわたしも!

 さっき交換しようって舞花ちゃんと話してたんだから」


 女子生徒たちがお弁当の交換会を始めた。

 賑やかに進む昼食の時間。

 そして……食事も終わって、昼休み時間も残り数分。

 みんなが自分の席へと戻っていく。

 そんな中で、


「ねえ……優雅」


 舞花が俺の名を呼んだ。


「うん?」


「もしよかったら……お弁当、あなたの分も作ってくるけど?」


「……え? いいのか?」


「一つも二つも同じだし。

 でもその代わり、感想……教えてよね」


「それは、勿論」


 俺の返事を聞いて、舞花は席を離れて行った。

 去り際、笑みが見えた気がしたけど……俺の気のせいだったかもしれない。

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