第5話 最高の高校生活を

     ※


 カラオケは大盛り上がりのまま終わりを迎えた。

 親睦会としては大成功で、クラスメイトとも随分と親しくなれたように思う。


「優雅くん、舞花ちゃん、またね~!」


「明日から同じ学校生活とか、マジ楽しみだわ~」


 同じ方向のクラスメイトと分かれる。

 残ったのは、俺と舞花二人きりになった。

 舞花と帰る帰り道。

 幼少の頃から変わらない、二人の時間。

 夕日もすっかり落ちて、夜の星が浮かんでいる。


「ねえ……優くん」


 優くん――二人きりになって、舞花は気が抜けたのだろうか。

 子供の頃から続く呼ばれ方。

 今では二人きりの時にだけ、本当にたまに溢れ出てしまうみたいに漏れる言葉。


「……どうかしたのか?」


 俺がゆっくり返事をすると、先を歩いていた舞花が振り向いた。


「この高校生活をさ。

 今までよりも、もっともっと……楽しい時間にしようね」


 夜空に瞬く星空よりも、眩しい笑顔。

 一瞬、まだ小さかった頃の舞花の姿が目に浮かんできた。


(……前にもこんなことがあったな)


 中学校に入学したその日の帰り道。

 同じクラスになった帰り道に、舞花は今日みたいに「楽しい時間にしたいね」と言っていた。


「約束、ね?」


 少しだけ……笑みを浮かべるその瞳が不安そうに揺れた気がした。

 でも、俺の答えなら最初から決まってる。

 だから不安なんて、感じなくてもいいのに。


「ああ、約束だ」


 この高校生活を最高のものにしよう。

 そして、特別なものにしよう。


 俺にとっても、俺に関わるみんなにとっても――振り返った時に、最高に楽しかったと心から思えるようなそんな――三年間にしよう。


 そんな風に思えたのは、たった一枚の絵のお陰だ。

 忘れようとしていた感動を、隠していた好きだっていう想いを、俺に思い出させてくれたのだから。


 止めていた足を進める。

 止まっていた時間と共に。


「もう暗くなる。

 舞花の両親も心配するだろうから、早く帰ろう」


「……ありがと、優雅」


 隣を歩く舞花が、小さな声で感謝を伝える。

 俺たちはそれから、互いに口を開くことなく、静かな夜の道を歩いて行った。


     ※


 ふと、絵を描いていた私の手が止まった。

 なぜか頭を過ぎったのは、クラスメイトのこと。


(……確か名前は……皆好     ※


 カラオケは大盛り上がりのまま終わりを迎えた。

 あとは各々自由解散。

 親睦会としては大成功で、クラスメイトとも随分と親しくなれたように思う。


「優雅くん、舞花ちゃん、またね~!」


「明日から同じ学校生活とか、マジ楽しみだわ~」


 同じ方向のクラスメイトと分かれる。

 残ったのは、俺と舞花二人きりになった。

 舞花と帰る帰り道。

 幼少の頃から変わらない、二人の時間。

 夕日もすっかり落ちて、夜の星が浮かんでいる。


「ねえ……優くん」


 優くん――二人きりになって、舞花は気が抜けたのだろうか。

 子供の頃から続く呼ばれ方。

 今では二人きりの時にだけ、本当にたまに溢れ出てしまうみたいに漏れる言葉。


「……どうかしたのか?」


 俺がゆっくり返事をすると、先を歩いていた舞花が振り向いた。


「この高校生活をさ。

 今までよりも、もっともっと……楽しい時間にしようね」


 夜空に瞬く星空よりも、眩しい笑顔。

 一瞬、まだ小さかった頃の舞花の姿が目に浮かんできた。


(……前にもこんなことがあったな)


 中学校に入学したその日の帰り道。

 同じクラスになった帰り道に、舞花は今日みたいに「楽しい時間にしたいね」と言っていた。


「約束、ね?」


 少しだけ……笑みを浮かべるその瞳が不安そうに揺れた気がした。

 でも、俺の答えなら最初から決まってる。

 だから不安なんて、感じなくてもいいのに。


「ああ、約束だ」


 この高校生活を最高のものにしよう。

 そして、特別なものにしよう。


 俺にとっても、俺に関わるみんなにとっても――振り返った時に、最高に楽しかったと心から思えるようなそんな――三年間にしよう。


 そんな風に思えたのは、たった一枚の絵のお陰だ。

 忘れようとしていた感動を、隠していた好きだっていう想いを、俺に思い出させてくれたのだから。


 止めていた足を進める。

 止まっていた時間と共に。


「もう暗くなる。

 舞花の両親も心配するだろうから、早く帰ろう」


「……ありがと、優雅」


 隣を歩く舞花が、小さな声で感謝を伝える。

 俺たちはそれから、互いに口を開くことなく、静かな夜の道を歩いて行った。


     ※


 ふと、絵を描いていた私の手が止まった。

 なぜか頭を過ぎったのは、クラスメイトのこと。


(……確か名前は……皆好みなよし 優雅ゆうがくん)


 気になってスマホで少しだけ検索をしてみる。

 大人気グループビーチューバ―『ワーズオブスマイル』のメンバー。

 SNSのちょっとした呟きでも、数千の『いいね』が付いていた。

 少し調べるだけで、とにかく大人気なのがよくわかる。


「やっぱり、有名な人なんだ」


 なんでこんな人が、あたしに興味を持ったんだろう?

 アニメや漫画に親しみを持っているタイプには見えない。

 でも……


「すごく、真剣な顔……してた」


 だからなのか、不思議と気になってしまう。


「はぁ……これ以上はダメ」


 今は、考えるのはやめておこう。

 一日でも時間を無駄にしちゃいけない。

 絵の道を志した時に、私は決めたんだ。

 好きなことに命を掛けて、後悔のないように、本気で生きるって。


「よし、描こう」


 今日も絵を描く。

 いつか見た、あの日の理想を、私の手で描く為に。 


 気になってスマホで少しだけ検索をしてみる。

 大人気グループビーチューバ―『ワーズオブスマイル』のメンバー。

 SNSのちょっとした呟きでも、数千の『いいね』が付いていた。

 少し調べるだけで、とにかく大人気なのがよくわかる。


「やっぱり、すごい人なんだ」


 なんでこんな人が、あたしに興味を持ったんだろう?

 アニメや漫画に親しみを持っているタイプには見えない。

 でも……


「すごく、真剣な顔……してた」


 だからなのか、不思議と気になってしまう。


「はぁ……これ以上はダメ」


 今は、考えるのはやめておこう。

 一日でも時間を無駄にしちゃいけない。

 絵の道を志した時に、私は決めたんだ。

 好きなことに命を掛けて、後悔のないように、本気で生きるって。


「よし、描こう」


 今日も絵を描く。

 いつか見た、あの日の理想を、私の手で描く為に。

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