6話 おまんじゅうと一緒  でもなんか先っぽが変

「お湯は平気?」

「きゅ……きゅい……」

「そっか。 熱かったら出てね」


モンスターと言っても、この子はまだ赤ちゃん。

だってそもそもどんな動物モチーフなのかはっきり分かんないもん。


だから、とりあえずで犬とか猫とおんなじ感じにすれば良いって思った僕は、ぬるま湯にしたお湯を張った風呂桶に浸けてあげて、体を流してお湯に浸る。


水が怖いってわけでもないみたいだし、大丈夫でしょ。

猫とかは引っかいてくるけど、この子は爪ないし。


「……!!!」

「もー、なんなのさぁ。 うりうり」

「……! ……!!!」


うりうりって顔をつついてあげても……やっぱ僕のことすごい目で見てくる。


……まぁもう慣れちゃったしから、どうでもいいや。

結局、僕が臭いとかそういわけでもないみたいだし。


「……ふう……それにしてもお母さん、本当に今日は元気なんだ……」


ちゃぷん。


「ふぅー……」


「……!? …………??」


湯船の汚れとかも特段にないし、普段なら持てないはずの蓋も普通にしてあった。


……お風呂まで綺麗にできるだなんて。

普段なら、せいぜいお湯を抜くまでなのにね。


「なんであんなに元気なんだろ……新しいお薬が効いてきたのかな……」


ちらっと見てみると……風呂桶に仰向けになってこっちをじーっと見つめて来てるおまんじゅう。


風呂桶の中に張ったお湯の中でぷかぷか浮かびながら……後ろ向きになっても、首を回して僕をガン見して来てる。


……正直怖いよ?


「……そんなに臭い?」


「きゅっ!? きゅいきゅいきゅいっ!」

「あはは、違うのかな? そうだといいけど」


「違う違う!」って言ってるような鳴き声で思わず笑っちゃった。


そうだよね、臭くはないよね。


光宮さんからも「柚希先輩って男の人なのに臭くないですよね!」って夏場で汗かいてるときも言われたし。


学校の女子たち、おばさんたちやパートさんたちからも、臭いとは言われたことないし。


女性って臭いにすっごく敏感だから……男として見られないからこそ、臭いときは臭いってはっきり言われるはず。


そうじゃないなら大丈夫なんだろう。


……男子からは「なんかくせー!」って言われたことあるから、もしかしたら……って未だに不安だけども。


でもお母さんに聞いても先生に聞いても、僕をいじめない友達に聞いても臭くないよって言うし、臭くないって信じとこう。


お母さんとかは「むしろ良い匂いよ」って言ってくれるけども、多分「そんなに臭くない」ってオブラートに言ってくれてるって解釈してる。


まぁ……体臭は、あるよ?

僕だって人間だからね。


でも、どっちかって言うと良い匂いだって思うんだ……まぁ自分の体臭だからね、自分の体臭で気絶するような造りはしてないだろうし。


「すんすん……制汗剤……ちゃんと使おうかな……」


ちゃぷ、と肩を撫でる。


……なで肩過ぎて、すぐに服がズレちゃってだらしなくなるし、肩が凝りやすいし女の子に見られやすいしで、良いとこない肩。


そんな両肩に髪の毛が張り付いてるのを見ると、やっぱり早く切らなきゃって思う。


「髪の毛切って……あとはもっとバイト代貯めてお肉とか食べて、男らしい体にならなきゃ……」


「!?」


そうだ、僕はがんばって男らしくならなきゃ。


どう鍛えても筋肉も付かないし、むしろ余計に脂肪だけ付くっていう悲しい体だし、身長も伸びないしヒゲも生えないし。


……生えてる男の象徴も小学生サイズだし、その周りの毛も生えてないから中学でのプールとかの着替え、恥ずかしかったし。


中学の途中から男子と一緒に着替えるのが、なぜか禁止されたから見てないけども……あの時点でサイズ差は……うん。


ちょっと自信ないんだ……男として。


「……やめやめっ。 お母さんが元気で、おまんじゅうと会えた日なんだ。 前向きに行かないとっ」


ざぶっと湯船から上がって、風呂桶で……やっぱり目ん玉ひん剥いてるおまんじゅうをそっと脇に寄せてイスに座る。


「!?!?!?!?」


……ん?


この子、僕の脚の間、ガン見してる?


「……まさかぁ、モンスターだし」


人間だって犬猫のおまたなんて興味ないし、昔飼ってて一緒にお風呂入っても気にならなかったことを思い出すと、「きっと人間の体が珍しいんだろう」って納得できた。


犬とか猫とか、下から見上げてぷらぷらしてる何かがあったら目が行くんだろうね。


「……あ、さっき噛まれたとこ、真っ赤……もう……」


片っぽだけまるで女の子の胸みたいになってる僕が、鏡に映っている。


これじゃまるで女の子みたいじゃん。

恥ずかし……。


「……モンスターの赤ちゃんだから、他種族のでも吸いたくなるのかなぁ……」


長くなりすぎた髪の毛をかき分け、まずは僕自身を。

その後は、


「!?!?!?!?!?!?」


……初めて見る異種族を食い入るように見つめてるこの子を洗ってあげよう。





「んう……」


朝日が顔に当たって目が覚める。


……昨日はバイトの子が来なかったから十何時間、休みはあったけど立ちっぱだったから、てっきりだるくてしょうがないって覚悟してたけど……意外と平気っぽい。


「おまんじゅう……?」

「きゅい」


生きもの独特の香ばしい匂いのする方を向くと、ちょうど僕の鼻がおまんじゅうの毛皮にもふっと入り込む。


……毛皮?


「……おまんじゅう……ひと晩で毛、伸びたねぇ……」

「きゅい」

「……ふへへぇ……やわらかーい」

「!?」


ぎゅうっと抱きしめて……何だか微妙におっきくなってるらしいおまんじゅうを抱きしめる。


「はぁ―……かわいいなぁ……」

「きゅ、きゅいぃぃ……」


んー。

なんだか体が軽いし、最近ぴりぴりしてた胸の先っぽも落ち着いてるし、思ったよりコンディション良いみたい。


学校の健康診断でこのことを話したら「ああ、成長期だからね」とか「君みたいな子は女性ホルモンで一時的にそうなるんだよ」って言われた先っぽ。


無意識でつい掻いちゃうくらいに……痛がゆいって言うか、そんな不快感があったんだけども今朝は平気。


……張る感じはまだあるけど、痒くないならもうこれでいいや。



◆◆◆



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