5話 一緒にお風呂。 おっぱい噛まれた

「…………それでね、お母さん」

「ええ。 スキルが出たのね。 ずっと欲しがってたダンジョン適性が」


「うん。 テイマー……おまんじゅうみたいなモンスターはなかなか居ないだろうけど、モンスターを手なずけて戦ってもらう職業なんだって」


テイマー。

調べてみたら、結構レアなスキルらしい。


スキルの発動条件がそもそもとして「ダンジョン内で近づいたとき」……だから、お互いに攻撃しちゃったりしてダメになったりするし、テイムするって言っても相性があるとか何とか。


普通は倒して、HPがぎりぎり残ってるときに起き上がってこっち見てくるってのがテイムした合図らしい。


おまんじゅうの場合は違ったけども……きっとスライムたちにいじめられてHPが少なくなってたんだろうね。


けども、普通なら恐ろしいモンスターを仲間にして戦ってもらえるんだ。


強いモンスターだったり、強く育てたりすれば心強いらしい職業なんだって。


……なにより、僕みたいに腕力も体力も度胸もない人間にとっては、安全な後ろから見てるだけで良いから楽らしい。


「……ダンジョン、潜るの?」

「……うん。 うちの県の最低賃金じゃ、1日2時間くらい増やしてもね……」


「ゆず。 無理はしないで……お母さんは、普通のお薬でも現状維持はできるってお医者様が」

「うん、分かってる。 お母さんを1人にはしたくないもん、無茶はしないよ」


お母さんにとっても、家族は僕だけ。

だから僕自身を犠牲に……なんてことは考えてない。


でも、やっぱりダンジョンには危険も伴う。

特に初心者の内はうっかりで簡単に死んじゃうって言うし。


一応は緊急脱出装置……リストバンドっていうので死ぬことは少なくなってるらしいけど、それでも僕みたいなひ弱でレベルの低い人間は、「攻撃されたぁ!」ってショック死とかあり得る。


僕ならあり得る。

すっごくあり得る。


「でも、お母さん。 これ以上賃金の上がらないバイト続ける以外に、生活をもうちょっと良くするには……これしか」


「……ずっと、ゆずに助けられてばっかりね」

「僕は、お母さんのたったひとりの家族だから」


そうだ。


これまでは「才能が無いから」って諦めてたけど、ダンジョンっていうのは、安全な低階層でも普通のバイトよりも儲かるって言う。


レベルを上げるか有名になれば案件……お仕事も来るし、スポンサーもつけられるらしいし、どこかの事務所に入れば月とか年単位でお給料が入るし。


今みたいに契約とバイトを掛け持ちするよりも、よっぽど可能性はあるんだよね。


高校は休学中だから、資格は中卒のみ。

普通の中学生から高校生になったし、スキルは一切無し。


そんな僕。


……このままじゃ、正直ダメだとは思ってたから。

こういうきっかけって大切なのかもね。


「無理そうなら止めるよ。 でも……」

「……くすっ。 やっぱりゆずは『男の子』なのね」


「!!?」


「うん、やっぱりダンジョンとか冒険は憧れるんだ。 僕は『男』だから」


「ぎゅいっ!?」


男としてがんばる決心をした僕たちの真下。

なぜかおまんじゅうが……にんじんを落としてびっくりしてる。


「ん? どうしたのおまんじゅう……詰まった?」


「ぎゅいっぎゅいっ!?」


「んー? ……大丈夫そうだけどなぁ……」

「どうしたのかしらねぇ……?」

「さぁ……?」


「きゅ、きゅいぃぃぃ……?」


それからしばらく、なんか変な顔して僕の顔のぞき込んでくるおまんじゅうだった。





「久しぶりにお母さんの料理食べた! ……けど本当に大丈夫?」

「ええ。 まだこんなに元気なのよ。 あ、ついでにお風呂も沸かしておいたわ!」


「……無茶はしないでね。 お医者さんにも言われてるでしょ、元気な気がしてもムリしないでって」

「きゅい?」


昔からがんばり過ぎちゃうお母さん。

だから心配だけど……確かに顔色はものすごく良い。


でも油断はできない。

だって1年の内に元気な日が何日かって生活が、何年も続いてるんだもん。


「ほらほら! おまんじゅうちゃんも洗ってあげないと! 私は本当に大丈夫だから!」

「……うん」


心配だけど当のお母さんは元気そうだし、せっかく元気なんだから無駄に心配する姿を見せるのもなんだか悪い。


だから僕はおまんじゅうを抱きつつ、お風呂に向かった。





「きゅいっ!?」

「ん?」


シャツを脱いだところでおまんじゅうの叫び声。


「……どうしたの?」

「……!! ……!?」


……なんか猫がすごい顔してる動画みたいな顔してる……僕、そんなに臭いかなぁ……。


「すんすん……ワキも別に……あ、さっきので汗かいたからかなぁ……」


でも、そこまで臭い?

鼻が良いから?


幼体ってことで、ほんとうによく分からないおまんじゅうな見た目だけども、もしかしたらネコ科なのかも?


……しゅるっ。


ぱさっ。


「!?」


僕はもしかしたら臭いかもって疑惑に傷つきつつも、「お母さんにもしものことがあったらいけないから」って手早く準備。


シャツを脱いで洗濯カゴへ。


「!!??」


お母さんのお古のズボンと、ぱんつも脱いで。


「……!? ……!!?」


……でもほんとう、高校生になっても男らしさの欠片もない体。


鏡の前の僕は、髪の毛がぼさぼさに長くなってて肩甲骨どころか背中まで……横髪も胸に被さるようになってる。


ヒゲの1本も生えてこないアゴに、お母さん譲りの幸薄そうな顔つき。


「……きゅいっ!」


そんな鏡に映る僕を眺めてたら……いきなりおまんじゅうが飛びかかってきて、事もあろうか。


「やんっ! ……もう、僕は女の子じゃないから、おっぱい出ないよ……?」


「!?!?!?」


おっぱいに吸い付かれてぴりっとして、慌てて抱っこして離させる。


……吸い付かれた胸は、中学のころまでバカにされたように、脂肪がたまりやすい肉付き。


なんだかおしりにも脂肪が付きやすいせいで、ほんとう、小中学生と「女だ!」ってバカにされ続けたっけ……さすがに中学の後半からはされなくなったけど。


でも、プールとか修学旅行でのお風呂とか……みんなの視線がなんだか怖かったんだよなぁ。


背が女子くらい低くってこれだからって、いじめの標的にしようとしてたのかな……覚悟はしてたけど、さすがに受験が近くなったからか、なんだか遠巻きにされてただけだけども。


まぁ多分、小学生のときからガキ大将な友達のパシリだから、直接に手を出されなかっただけなんだろうけども。


でも、今はそんなことよりも……。


「うう……じんじんする……」


……ついでに、吸い付かれた乳首がひりひりする。


もう、最近またぴりぴりじくじく痛い時期だったから余計にじんじんするなぁ。


女の子はもっと敏感だって言うのに、赤ちゃんから噛まれたらどんだけ痛いんだろう。


「……? …………????」


「ほら、入るよ。 そんなに汚くないけど、お布団にダニとか困るからね」


「……!?!?」


……で、なんでこの子はずっと目と口を全開なままなんだろう。


やっぱ僕、臭い……?


光宮さんからは「良い匂いです!」って言われるから大丈夫だって思ってたんだけどなぁ……。



◆◆◆



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