第二章 増える仲間たちとのんびり領地拡大計画
第1話 オーガス・フリューゲル
我はアリーゼル王国領地フリーデル村の第3団憲兵、団長 オーガス・フリューゲル。
フリューゲル家は代々アリーゼル王国に仕える公爵家である。その三男が私だ。
魔力に乏しい私は、剣術だけでやっと憲兵団長の地位を手に入れた。
2人の兄は宮廷に仕える身である。
長男の アストリア・フリューゲル は、宮廷騎士団第1大隊団長を務める。宮廷騎士団の序列の中では第1大隊は筆頭である。
次男、ニコラス・フリューゲル は、宮廷魔導士統括隊長を務める。いわゆる、宮廷魔導士を束ねるトップなのだ。
フリューゲルの家系で宮廷の名を外れた役職に就いているのは、我のみ。
そんな私を追いやるため、序列最下位に位置する第3団憲兵団長の名と、王国より外れた辺境の地であるフリーデル村領主の肩書を与えられた。
第3団憲兵……
言ってみると、これといって秀でた能力がない者の溜まり場で、落ちこぼれ連中の集まりだ。
そしてハルフラル港町で交易所や市場を構築して、王国の外交の玄関として繁栄させたいという政治絡みの要請が我が第3団憲兵に下された。
要は、ハルフラル港町の交易状況や建築予定地の視察である。
ハルフラル港町の調査はひと通り終え、王国に報告をと帰還の道中であった。
我らに王国より使いの者が参った。
疫病蔓延にて、王国への立ち入りを禁ずる。
フリーデル村の隔離閉鎖。
こうして、我らは孤立状態となったのだ。
♦︎♦︎♦︎
やっと、やっと逃げ切った。
くっ……2人、やられたか?
残る兵士たちは?
まあ良い。
生き残れた事自体が奇跡なのだ。
動ける者は?
さほどとおらぬか?
村で一体何があったというのだ?
門番も居なければ、村にも入れぬ。
王国からの知らせでは疫病との事であった。
うっ……
死臭臭い。
そうか。疫病にかかり死んだ者を火葬しているのか?
疫病の正体が分からない以上、ここにいるのは悪手。優秀な薬師を探し出さねば村が死んでしまう。
ここより近い『イフラ村』……
いようはずがない。
あそこは獣族の村。あんなところに薬師などおらぬ。
ならばーー
頼れるのは、魔王国のみとなるな?
ここから魔王国を目指すとなれば、この『淵の森』を越えるしか手段はない。
やむを得ん!
これがあの噂の淵の森か?
強大な魔物の住処と言われるだけあって、殺気がヒシヒシと伝わってくる。
兵士たちも気付いてるようだ。
視線を感じる。
遭遇しない事を祈るしかない!
一国を墜とすほどの力を持つと言われる、三大魔獣だけはなんとしてでも避けなくてはならぬ。
ここでいう三大魔獣とは、
ユニノーブル・ウルフ、キングス・ベアー、ジャイアント・スパイダー である。
炎を司る ユニノーブル・ウルフ、群れに遭遇すると生命の終焉を迎えると伝承されており、通称
遭遇して生きて帰った者がいないから確かではない。
キングス・ベアー、 巨大熊であり単体戦闘力では最強といわれる三大魔獣のひとつ。特徴が並外れたパワーと巨体から想像出来ぬほどの俊敏さを兼ね備えており、それと二重の防御障壁で圧倒的な強固を誇る。
ジャイアント・スパイダー、その名の通り巨大蜘である。嗅覚や視覚が優れており、自身の半径に認知型の糸を引き、侵入者を察知するとすかさず拘束し動きを封じる。警戒網の範囲は半径2キロに及ぶ。捕らえた者の生き血を吸い取る。
粘着力があり、消化作用を備える白き糸が特徴的で、その糸が視界にでも入ってしまうと、ジャイアント・スパイダーの餌食となる。
ゼロから始めるのんびり異世界農家生活 〜与えられた「万能農具」とスキル「錬金術」に、学んだ「薬学知識」で領地を豊かにしようと思います〜 夢実千夜@Senya_Yumemi @Senya_Yumemi
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