第4話 トライアンドエラー
「うっ……朝かっーー」
あれからオレは与えられたスキル【錬金術】を色々と試してみた。
そこで分かったことがある。
錬金術を使い続けると体力が瞬く間に消費してしまう事だ。一応オレの体は健康で丈夫な体設定にされているのだから無尽蔵だ。と、そんな都合良くは無かった。
どれだけ錬金術を試してみたか?
答えは…洞穴は生成された物質でいっぱいだとだけ言っておこう。
水は生成出来た。
水だけを生成したところで豊かにはならい。
そこで思いつくばかりの物質の生成にトライしてみた。
先ずは、鉄だ。
日本の歴史でもある通り、青銅の出現から大きく文明が変わっていく。石器から鉄に変わるのだ。
鉄があると何ができるのか?
煮炊きが出来る。石器でも可能ではあるが扱いに困る。いや、錬金術で石器の生成も試してみた。だが、生成は出来なかった。
そこでオレにはある仮説が生まれた。
やはり、錬金術とだけあって科学と大きな関係性があるのではないだろうか?という事だ。
ただ漠然とした石器をイメージしても錬金生成は成らず。
鉄については元素記号や化学反応のイメージが容易であって、前世での生活にありふれていた物だけあって物体のイメージはし易かった。
やはり錬金術はこれなんだという仮説に導かれた。
ただの鉄ではつまらない。
鉄といっても、加工物や加工に至る工程で鉄自体の性質が飛躍的に変化する。
よく目にしている鉄、正式には鋼鉄という。
鉄の上位にある玉鋼や、ステンレスなどは炭素の含有量で呼称が異なるし、性質だって異なる。
そしてオレは実験が大好きだ。
錬金術を使っての鉄を生成する。
これは成功した。
次にだ。鉄を生成した際の脳内イメージに炭素を加えてみて、ステンレスの生成を試した。
まあ、正確に言うと鉄にクロムと炭素を加えるのだ。学生時代から科学オタクとして歩んできたオレにとっては、ステンレスに含まれる鉄はもちろん、クロムや炭素の含有量は自ずと知っている。
鉄(Fe)は50%以上、クロム(Cr)は10.5%以上、そして炭素(C)は1.2%以下である。
これを脳内で化学式や3つの物質が混ざり合うのをイメージする。
こうしてステンレスの生成は成功した。
次なる玉鋼は、実際では生産難易度が極限に高いとだけは簡単に想像が出来た。
生産方法は知識としてはある。
たたら生産方法以外では生成出来ないのも知っている。砂鉄を熱して溶かし、風や化学反応を起こして曲げて折って重ねて叩くを繰り返す。
極限の環境下で行われる精錬で、極限の工程を経て出来るのが玉鋼だ。
あの日本刀の原料でもあるしイメージはつく。
対して、炭素の含有量もまた極限に低いのが特徴だ。炭素は硬度を大きくさせるが、粘り強さが損なわれる。
これら知っている限りの知識を精密に脳内イメージで膨らませた。
見事、錬金術での玉鋼の生成に成功した。
これでこのスキル【錬金術】のおおまかな使い方や発動条件は分かった。
が、また足りない。
縛り条件…もっと言うと、ある条件下では錬金術が発動しない場合だ。
もっと検証実験をする必要があるな?
錬金術で生成した鉄の塊に対して、そこからステンレスを生成させる。
うむ。これは難なく成功した。
今まで生成したものはただの塊でしかない。
ステンレスを加工ともなると、工具や機械もないこんなところでは困難極まりないのだ。
ステンレス製のスプーンやフォークを錬金術で生成は出来ないだろうか?
と、脳内でステンレス製スプーンをイメージをしてみたが、生成されたのはただのステンレスの塊だった。
加工物は生成出来ない?
この仮説を実証させるため、水を加工させてみる事にした。
すなわち、熱湯の生成や氷の生成だ。
化学式には手を加えず、シンプルな形態変化だけを試してみる。
しかし、生成されるのは水だけであった。
よって、これらの仮説検証から分かった事は、
新たに加わる物質、化合式の変化、加える物質に元素記号が存在し得る物質ならば、錬金術での生成が可能。
生成物に加工を加えるのは不可能。
まだ色々と試し甲斐はありそうだけど、このままでも十分有用だ。
こうして朝を迎えた訳だ。
錬金術で資源を生み出す。
ただ少量であれば良いが、これが大量に消費するともなればオレの身が持たないだろう。
こうも便利な錬金術が使えるといっても、どのみち資源を探索する必要があるのだ。
とはいえ、資源発掘の前にまだまだならなくてはいけない事がある。寝床と呼べる簡易住居は完成した。
問題は食糧だ。
せっかくの万能農具なのだから、自給自足を目指したいところだ。
オレは今日の作業予定を考える事にした。
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