第3話 住居建築と初めての錬金術

「うっ……」


 洞穴の奥にまで届く、朝を迎えた陽の光が眩しかった。

 夜通しで木工加工やら住居の設計と建築方法を試行錯誤していた。


 万能農具。

 ここまでで分かったことを整理しておこうと思う。

 先ずは、形をイメージしただけでその通りの道具に具現化する。

 それと、万能農具に触れている間は体力の消耗が比較的少ないのだ。健康で丈夫な体っていうオレ自身の体の効果と、万能農具の効果で相乗作用になっているのかもしれない。


 それにだ、切れ味で表現した方が良いのか、それとも効果なのかは分からないが、万能農具はひたすら効率が良過ぎるのだ。それなりに立派な大木を切り倒す時も、そこまでの力を必要としない。


 やはり、万能農具というだけあって、万能なのだ。


 良かった点は他にもある。


 ここの気候や季節だ。

 夜の冷え込みは感じられず、むしろ清々しくも感じられた。

 それに、木々に付いてる葉の色からして、青々としているから春から夏にかけての間、オレがいた日本ではちょうど5月か6月を感じさせられる。


 なぜ良かったと?


 冬であればきっと、食糧調達や水資源を探すのだって一苦労することになると予想されたからだ。


(さあてと、顔を洗ってからと行きたいところだけど、そんな贅沢を言ってられる環境ではない。水資源はおろか、食糧調達だってまだだ。まだまだやらなくてはいけない事が山積みだ)


 寝ないで考えた建築方法を試してみるか?


 何等分かに切り分けた丸太を横に並べていく。

 それらの間に間柱を入れて、接合部にはノコギリやノミで切れ込みを作って継ないでいく。

 言うなればログハウスだ。


 屋根には木の皮を貼って、加工した木ビスで留めていく。屋根から垂木までの間には採光部をあしらっている。窓を作りたかったがそもそものガラスが無いから、妥協と挫折の名の採光部を取り入れた訳だ。


 何も工夫をしなかった訳ではない。雨が採光部から漏れないよう屋根を長く設計した。


 簡易住居…もっと言うとほったて小屋だ。

 初めてにしてはまあ立派ではないだろうか?

 なんせ、オレは建築に至っては素人なのだから。


 冬の到来の前には、もっと立派で家だと言えるような建物にしたいところだ。

 床はフローリング加工にして、ベッドや家具も欲しいな。暖炉も有れば尚よしってところだ。


 くうーーっと、ひと仕事終えてキンキンに冷えたビールでもと行きたいところだが、考えるのはよそう。

 考えるだけ欲しくなってしまう。


 それにしても喉が渇いた。

 昨日から食わず飲まずだから尚更だ。


 うーん……


 待てよ?


 スキル「錬金術」を与えるとか何とか言っていた気がする。その錬金術とやらで水を出さないか?


 試してみるか?


 アニメで見た感じに両手を差し出して、

 「錬金術!水よ出ろ!」


 ……


 水は出なかった。


 ーー貴方に与えられし万能農具とスキル錬金術を持ってーー


 と、オレがここに飛ばされる時、閻魔様の執事が確かに言っていたと思ったが、錬金術ってどう発動させるの?


 茶番にも等しく思える、あの閻魔様とその執事のやり取りを巡らせた。


ーー錬金術のスキルがあればきっと君の経験を大いに活かす事が出来るよ?ーー


 君の経験っていうと、薬学研究者としての経験って事だよな?そもそも薬学って科学だし、科学といえば実験なのだが?

 いや、ちょっと待てよ。


 薬学についての最低知識は元素や分子に化学式やイオン式的な思考だ。そして化学反応。


 元素……?


 調合や新薬開発も全て、元素と元素の化学式を用いてるじゃないか?


 そこに来て、万能農具はただのイメージで具現化できるから。


 もしかして……


「水の元素記号はH₂Oで化学式は水素がふたつの酸素がひとつ……」


 オレは水の元素記号や化学式を脳内イメージして、水の性質や水自体をイメージしてみた。

 そして再び、両手を差し出して、


「錬金術!」


 手のひらから伝わる冷たさと透明の液体が湧き出る感触。この瞬間、水だと察知することが出来た。


「やっぱりそうだったんだ!イメージさえすればできるんだ」


 両手から湧き出た水は瞬時に土に吸収されてしまった。

 洞穴に戻り、木工加工したコップの上に再び両手を差し出して、さっきと同じように水の脳内イメージを浮かべ「錬金術」と唱える。


 両手から湧き出た水はみるみるとコップに溜まると、それを一気に喉に通す。


「水だ!普通に水だ!飲める!飲めるぞ」


 ただの水がこんなにも上手いと感じたことは初めてだった。渇いた喉が潤って満たされるていく感覚。

 これさえあれば何だって出来てしまうと、そんな思い込みさえも与えられた。



➖➖➖➖


【あとがき】

ふぅ〜、よいしょっ‼︎

たまにこうしてあとがき部分で出てくる夢実です


よくある貴族家に転生や、序盤からざまぁ展開じゃなくてごめんなさい汗


それでも今後、いろんな意味でちゃんとしっかりざまぁして行きますのでご期待して下さい。

少し変わった形で!ですけどね?


今後の小ネタを少々……


この主人公、薬学研究者と錬金術といえば?

異世界で薬なんかを開発してしまうと思いませんか?今では万能の薬なんて呼ばれてる、◯◯を培養して……とか、

薬学とは違った視点での科学要素だったりを盛り込んでいく予定です。


フォロー登録や

⭐︎での評価して頂けると嬉しいです( ^ω^ )

更新お待ち下さい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る