第66話 ょぅι゛ょ(ようじょ)

 その明るくなった俺の視界には小さな女の子がぽつんと一人立っていた。アリアより一回りは小さな女の子。水色の瞳と同じ色の髪が腰まで伸びた可愛らしい女の子。胸はお世辞にも大きくないけど、そんな小さな胸にちょこんと付いてる鮮やかな色のピンクの二つの乳首。下の毛はまだ生えてな……ってまてまてまてまて! 毛! なんで毛! 毛じゃねえよ! 乳首とか何じっくり見てんだよ! 俺は! ってか素っ裸じゃないか!


 ってマジか! なんで裸の女の子なの? いや、クリムゾンも裸だったけど最初は竜だったし、こんな事態は予想してなかったZe! あ、動揺でクリムゾンっぽくなってしまった! ってこれはマズイだろ! ょぅι゛ょ幼女をガン見しちまった! 警察に捕まっちまう! っていや待て、ここは異世界だし警察なんか居ないぞ! ってそんな場合じゃねぇ! ってどうすりゃいいんだこの状況!


 俺の混乱した頭の中を訳の分からない考えが堂々巡りしてしまう。


 あっ! やば! とりあえず目を背けないと!


 動揺しすぎた俺は目を背けることすら忘れてしまっていた。それに気付いた俺は焦って目を閉じて顔を背ける。


「これでもう大丈夫です! ケント様!」


 しばらく経つとアリアの声が部屋に響き渡った。その声に俺が恐る恐る目を開けながら視線を戻すと少し大きめだがアリアの上着を羽織った幼女がいた。十歳にも満たないくらいの年齢に見える、が……


「随分若く見えるけど、君がアジュール?」


「このロリBBAババアを若いと言うのか? このあるじ殿は。嬉しいゾよ」


 ロリババア……? 今、自分で自分のことをロリババアって言わなかったか? でも、見ると顔を紅潮させ、頬に手を当てて恥ずかしそうにしている。前半の言葉と後半の言葉と態度の違いがありすぎないか?


「Hahaha! 確かにアジュールはロリババアだZe! 何せ一万年以上前からの知り合いだからNa!」


「お主も相変わらずヨノォ。正確には一万と二千年以上じゃゾ」


 どっかで聞いたようなフレーズはとりあえず放っておいて、俺は俺として話を進めることにした。どうやらアジュールもクリムゾンに勝るとも劣らないキャラだと一瞬で察したからだ。つーかよくこんなヤツらと旅できたな。前の契約者とやらは。ま、まあ気を取り直して。


「じゃ、じゃあ君がアジュールでいいんだね?」


「そりゃそうじゃ。あるじ殿ほどの力じゃ、王であるこのロリBBA以外は、我が精霊共じゃ耐えきれんゾヨ」


 横で全力でクリムゾンが顔をブンブンと縦に振っている。まあ、俺には実感は湧かないが、具現化自体は相当力を使うみたいだし、アジュールのいうこともわからないでもない。精霊側としても契約者の力によっては、精霊側にもダメージがあるのかもしれない。


「でも、アジュールはどうして人間の姿で現れたんだ? 龍の姿だと思ってたから焦ったよ」


「あるじ殿はおかしなことを仰るゾヨ。当たり前であろう。このロリBBAがそんな姿で現れたらこの部屋が壊れるゾイ」


「でーすーよーねー! って誰だよ! 心配いらないって言ったやつは!」


「オレはオレよりちっちゃいって言ったはずだZe! ほら、オレよりちっちゃいだろう?」


 得意げに語るクリムゾンに俺は突っかかった。


「言ったけど! 普通は龍の姿で現れると思うじゃん! クリムゾンがそうだったんだし!」


「あるじ殿、無駄ゾヨ。バカ竜クリムゾンに怒ったところで、意味のある行為ではないゾ?」


 あ、なんかアジュールはクリムゾンを馬鹿にしているような気がする。前言撤回。アジュールの方がまともだ。

 いや、まともってなんだろう? 俺の感覚が狂ってきているような気がする。


「あ、ああ……と、とりあえず目的は果たしたし帰ろうか……」


 疲れきった俺はヨタヨタと扉に向かって歩いていった。

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