第65話 契約の間
「思ったより狭いな」
扉を潜った俺は中を見渡してそう呟いた。地下として、室内としては、広い。天井は多分十メートルくらいはあるだろう。広さも体育館の半分くらいはありそうだ。でも、俺は狭いと感じてしまった。その理由は、
「ん? どうしたんだYo! ナウマスター! オレの顔に何か付いてるってのか?」
「ああ、ごめんな。別にそんなんじゃないから」
そう、クリムゾンだ。まぁ正確にいえばクリムゾンではないのだが。クリムゾンのサイズだ。今は人型だが、こいつの本当の姿は巨大な火竜だ。火の神殿の契約の間は外だったが、ここは室内。正直に言うとクリムゾンくらいのサイズだと大変なことになるだろう。そう思ったから
俺がキョロキョロと不安そうに辺りを見回しているのを不思議そうにアリアが尋ねてきた。
「ケント様? どうしたんですか?」
「ああ、ちょっとな」
「あ、もしかして」
俺の様子からアリアも何か気がついたようだった。アリアはスッとクリムゾンを見てこう尋ねた。
「ねぇ、アジュールってどんな姿をしているんですか?」
「アジュール? アジュールの姿かYo? アジュールって蛇みたいなやつなんだZe!」
さすがアリア。俺の意を汲んでくれたみたい。どっかのバカ竜とは大違いだ。って蛇、か。クリムゾンみたいな爬虫類みたいな竜じゃなくて、中国的な龍みたいな姿なのか? 水龍、って感じなのかな? アジュールは。なるほど。とはいえ今大事なのは、そこじゃない。
「なあ? アジュールってどれくらいの
「アジュールの大きさ? なんでそんなの気にしてんだYo!」
そりゃ気にするわ! ってクリムゾンには人間の感覚なんかわかんないのは当然か。今まで見てたからわかる。まあ、でも、良い奴? だしちゃんと話せば理解はしてくれるのも知っている。
「いや、契約する時にクリムゾンと同じように出てきたら困るかなと。ここ、部屋だし、あまり大きいと危険だからな。神殿が壊れるかもしれない。俺もアリアもそう思ったんだ」
アリアもウンウンと頷いている。まあ何か起きたところで俺は大丈夫だし、アリアは俺が守るからそこも大丈夫だけど、街が心配だしな。
クリムゾン? 知らんわ。勝手に潰れてろ。
「ああ、なるほど! なら心配いらないんだZe! アジュールはオレよりちっちゃいんだZe! 壊れることはないZe!」
「クリムゾンよりちっちゃいのか? 小ささの度合いによるけど」
俺の不安は拭えていない。そんな俺の手を両手で掴み、アリアがじっと俺の目を見てこう話す。
「ケント様。とりあえず喚びだしてみたらいかがでしょう? クリムゾンも
「まあ確かにそうか。クリムゾンの言葉ばかり疑っても可哀想だしなぁ、よし!」
俺は一度気合いを入れて部屋の中心に鎮座している魔法陣の上に立った。するとすぐに巨大な水柱が勢いよく上がった。
クリムゾンの時は巨大な火柱だったし、水の精霊の王だけに今回は水柱か。
しかしサイズはデカイな! クリムゾンの時と同じようなサイズだ! 本当に大丈夫か? これ!
俺が内心焦り始めていると、巨大な水柱は嘘のようにピタリと止んで視界が一瞬で明るくなった。
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