第47話 飛翔
「ユ、ユルジデ! ユルジデェグダザイィィ! ワル! ワルギハナガッダンゼズゥゥ! ゴ! ゴジュジンザマニ! イイドゴロ! ミゼダグテ! ズ、ズデナイデ! ゴメンナザイィィ!」
大きな水溜まりの中心でクリムゾンが突っ伏し、俺に謝罪をし続けている。街を出たのはまだ昼前だったというのに、辺りは既に薄暗くなっていた。
ちなみに水溜まりは消火で出来た水溜まり、ではない。全部クリムゾンの涙だ。クリムゾンの身体のどこにこんなに水分があるのか、を俺は知らない。ファンタジーの世界で細かいことなど気にしたら、負けだ。
ちなみに俺は、あれから一度もクリムゾンを叱ってない。突っ伏してからずっとクリムゾンは、謝罪しっぱなしだったからだ。追撃の怒りを与えるには少し可哀想過ぎると思ったから。
「だーかーらー! 俺はもう怒ってないってば! いい加減にしろ!」
「ボラ! オゴッデル! ゴメンナザィィィ!」
俺はため息を吐いた。ずっとこんな調子で先に進まない。そして天を仰ぐ。ああ、もう日が暮れる……今日は散々な日になってしまった。魔導具は無くなるし、カンドの村に少しも進んでない。
「ね? 大丈夫だから? クリムゾンちゃん? もう日が暮れるし」
俺は屈んでクリムゾンの頭を優しく撫でた。心做しか先ほどよりも落ち着いてきているようだった。
「少し時間をかけすぎちゃったなぁ。魔導具も無くなっちゃたし、今日は戻るしかない、か」
今からだったらカンドの村に向かうよりも、補給し直しにベネザの街に戻った方が正解だろう。水を生む魔導具が無くなってしまっったのが痛すぎる。
「そ、そうだ! わかりました! この身体をお役に立てて下さい」
急にガバッと立ち上がり、クリムゾンは急に服を脱ぎ出してしまった。身体を役に立てろって! 服も脱ぎ出したし! まさか!
「ちょちょ! クリムゾン! こ、こんなところで! ま、待て! 心の準備がぁぁぁ!」
俺は焦ってクリムゾンから目を逸らして仰け反った。そして拍子に尻もちを着いてしまった。逃げ場がない! 俺はクリムゾンに襲われる覚悟をした!
が、いつまで経っても俺にクリムゾンが襲いかかってっくる様子はない。俺が恐る恐る目を開けると、ドラゴンの姿に戻ったクリムゾンがそこに居た。
「オレに乗ってけば、多分すぐに着くZe!」
ドラゴンの姿になってどうやら調子を取り戻したようだ。口調も元に戻った。豚もおだてりゃ木に登る。じゃなくてクリムゾンもおだてりゃ空飛べるかな? ここはおだてとこう。また落ち込まれて時間をロスするのも嫌だし。
「え? 乗れるの? 凄いじゃないか! クリムゾン!」
「べ、別に凄くなんかないZe! ほらYo!」
クリムゾンは俺たちが乗りやすいように屈んで首を下げてくれた。俺たちがクリムゾンの背に乗ると、バサリ! と羽ばたきクリムゾンは空へと高く飛び立った。
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