第43話 初めての依頼
「いてて……アリア? どう? 何か良い依頼はある?」
まだ二日酔いでズキズキと痛むこめかみを押さえながらアリアに尋ねた。
俺たちは冒険者ギルドの掲示板とにらめっこをしている。とは言っても依頼書を見てるのはアリアで、俺とクリムゾンはアリアに任せっぱなしなのだが。
「んーと。そうですねぇ」
アリアは腕を組んで眉間に皺を寄せながら、じぃーっと掲示板を睨みつけている。
「これ、なんか如何でしょう?」
アリアは一枚の依頼書をピッと取って俺たちの前にヒラヒラとたなびかせる。が。
「すまん。何が書いてあるかわからないのだが……」
アリアはハッとして今度はその依頼書を両手で持って自分に向けた。
「あ、そうだ! も、申し訳ありません! えっと、薬屋さんからの依頼だそうです。何か薬を取ってきて欲しいみたいですね。詳しくは店で話すとのこと。報酬は……」
「あ、報酬はいいや」
お金に関しては昨日の分もまだまだあるし、魔石も売るほどある。って売れないんだけど……
ま、まあお金には困ってないのでわざわざ聞く必要はないな、と思ったから俺はそう答えた。
「でも、なんでアリアはこれがいいと思ったの?」
「ええ、私は鼻も利くし薬草の類なら見つけるのにお役に立てるかなって。それに……」
「それに?」
「薬屋さんならケント様に効く薬も売ってるかなって。ほら、お辛そうにしてらっしゃるので……」
俺がこめかみを押さえてる姿を気にかけてくれて、のことだった。回復魔法で治るかは知らないが、今はそんな手段は取れない。だったら確かにアリアの言う通り薬屋に行くのは最善だろう。
「俺のことを気にかけてくれたんだね? ありがとう。うん、これにしよう」
俺はアリアが選んでくれた依頼書を、早速受付に持っていった。今日も今日とて受付にいるのはエレーナさんだ。
「あら、ケント君。今日も遅いわね?」
二日連続で午後出勤。それこそ他の冒険者はひと仕事終えている者だっているかもしれない。
「あ、ああ。あの後夜まで騒いじゃって……」
エレーナさんはニヤリと笑って身をグッと乗り出して小声で俺に話しかけた。
「クリムゾンの服どう? 気に入ってくれた?」
「やっぱりエレーナさんが選んだんですね、あんな胸元の開いた服……」
「その様子だと気に入ってくれたみたいね」
「と、とりあえず! この依頼を受けます!」
俺は照れ隠しも兼ねて、依頼書をカウンターの上にパサッと置いた。エレーナさんはその依頼書を手に取り、ピラピラと顔の前でたなびかせる。
「これかぁ、ケント君には物足りないかも? これ、最下級のJ級でも受けられるやつだから」
「エレーナさん? 俺は
「あ、確かにそうか……まあ、冒険者ギルドとしては誰が受けようとも関係無いんだし。うん! これでよしっ! と。じゃあこれを薬屋のサラさんの所に持ってって。場所は裏に書いてあるから」
エレーナさんはハンコをポンっと押すと、依頼書を裏返してカウンターに置いた。エレーナさんの言う通りに裏に地図が書いてある。これが薬屋の場所なのだろう。薬屋の主の名前はサラという名前のようだ。
「はい! ありがとうございます!」
俺たちは早速その依頼書を持って薬屋に向かった。
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