第44話 サラの店
「ここ、かな?」
俺は依頼書の裏に描かれた地図とにらめっこしながらある店の前に立っていた。地図の通りならここなのだが。
「無敵薬局要塞系ヒロイン サラちゃんの店、って書いてあるので多分そうだと思います」
アリアが看板を見ながらそう言った。確か依頼主の名前はサラだったはず? ならここだろうが。
「なんだその店名……ま、まあここでいいならとりあえず入ろうか?」
カランカラン!
扉を開けると鐘の音がなる。近くにいた店員に俺は話しかけた。
「すいません、依頼を受けて来たんですけど……」
「あ、ああ。わざわざありがとうございます。早速ですけどこちらへ……」
どうやら目的のサラさんかな? 茶色のウェーブかかった長髪が特徴的な大人しそうな女性だ。
通された部屋にはテーブルと椅子が置いてある。俺たちは促されるままに椅子についた。するとサラさんがお茶を三人の前にコトリと置いた。
「こんな物しかありませんが……」
そう言いながらサラさんも席につき、持ってきたお茶に口を付ける。つられて俺も一口飲んだ。
「ありがとうございます。ってあれ?」
スっとこめかみの痛みが引いていくのがわかる。何故だ?
「良かった。やっぱりですね?」
「え、ええ……な、なんで?」
「いや、こめかみを押さえていたので頭が痛いのかと。鎮静成分のある薬草を煎じた飲み物です。効果があったようで良かったです」
「ありがとうございます! 実は二日酔いで……」
「まあまあ。であれば二日酔いに効く薬もありますので後で店をみて下さい」
「はい! で、早速ですが……」
俺が本題に入ると、サラさんは今までの明るい表情とは変わって真剣な表情になった。
「ええ、皆さんにお願いしたいのは隣村のカンドの村に行って来て欲しいのです」
「カンドの村? 何しに?」
「ええ、ここから歩いて二日ほどの場所にあるのですが、とある薬草の産地なのです」
サラさんはテーブルの上に地図を置いた。スっと指さした場所が恐らくカンドの村だろう。
「僕たちにその薬草を持ってきて欲しいと?」
しかし、サラさんは首をゆっくりと横に振る。
「いいえ。何ヶ月か一回の頻度で仕入れに行っているのですが、実は十日ほど前に店の者が向かっているのです。でも未だに帰らない。少し遅すぎるかと思って様子を見てきて欲しいのです」
「なるほど……」
「向かったのはアレックスという少年。似顔絵はこちらです」
サラさんはそう言うと一枚の紙を地図の上に置いた。黒い髪の男の子の絵が書いてある。
「かしこまりました」
「もうすぐ夜にもなりますので、向かって頂くのは明日で構いません。報酬は10万クローネ。道中にかかった旅費含めてになります。報酬は冒険者ギルドに預けてありますので、依頼が完了次第になりますが……」
「わざわざお気遣いありがとうございます。ではこれで」
俺はサラさんに挨拶をし地図と似顔絵を手に店を出た。
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