第40話 クリムゾンのアピール

 俺は急いで部屋まで戻り、アリアも中に入った瞬間にバタン! と扉を閉じた。


「クゥー、リィー、ムゥー、……」


「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーンだZe!」


「古いぞ! ってそうじゃない! お前何をした!」


 俺がクリムゾンを呼び出そうとすると、かなり食い気味にクリムゾンは現れた。勿論裸だろうが俺は万全だ。既に目を瞑っている。俺に死角はない。いや、目を瞑ってるから死角だらけだが、無いと言ったら無いのだ!


「ナウマスターが忘れてるかと思って、ちょこぉっとアピールしてみたんだZe!」


 周囲の温度を上げるのがアピール、だと? もしすぐに気づかなかったら何処までやるつもりだったんだ。クリムゾンは。


「忘れてなんかない! お前の服を買ったのだって知ってるだろ? 多分ずっと近くにいたんだろうから!」


 そうでもないと、あのタイミングで温度を上げるなんて出来るはずが無い。


「オウ! ずっと見てたZe!」


「クリムゾン! お前はこんなに短い時間も待てないのか? 前のマスターとやらから俺まで結構待ったんじゃないのか?」


「一万年くらいだZe!」


 え? 長い。ちょっと俺が想像してたよりも長かった。よくこんな堪え性の無いクリムゾンがそんなに待てたな。


「お前なんでそんなに長い時間待てて、今は数十分と待てないんだよ!」


「オレが好きで待ってた訳じゃないYo! オレと契約出来る人間なんてまずいないんだからNa!」


 その時、俺の背中がつんつんと突つかれた。突ついてきたのは背後にいるアリアだろう。


「ケ、ケント様?」


「ん? どうした、アリア?」


「いや、クリムゾンとお話されるんでしたら、別に服を着せてからでも……」


 そ、そういえば確かにそうだ。裸のクリムゾンと目を瞑ってる俺のやり取り、傍から見たら滑稽すぎる。アリアだけだからまだ良かったが……いや、アリアもどう思ったのか正直わからない。やべぇ奴らだと思われたかもしれない。


「ア、アリアの言う通りだな! ク、クリムゾン! さ、さっさと服を着ろ! は、話はそれからだ!」


「話はそれからだも何も、服を着させずに話だしたのはナウマスターだZe!」


 俺はクリムゾンのもっともな指摘にぐうの音も出ない。


「ぐぬぬ……く、くそ! その言い分は認めてやる! 今後は周囲に迷惑をかけるような行為は慎むこと!」


「服さえ着ちゃえばずっと具現化してていいんだから、アピールする必要もないんだZe!」


 クッ! い、言うな! クリムゾンめ、これが一転攻勢ってやつか……


「アリア! 後は頼んだ! 下で待ってる!」


 俺はその場の空気に耐えきれず、アリアに全てを任せて部屋を出ていった。

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