第36話 済んでいた契約
「え? ホントに?」
そもそも契約という物がわからない俺はつい聞き返してしまった。力が欲しいか? 欲しいならくれてやろう! とかちょっとカッコ良さげなシーンを想像してたのに呆気なさ過ぎると感じてしまったからだ。
「ホントにホントにホントにホントに使えるZe! 火の魔法なら何でもだZe! ナウマスター!」
どっかのCMで聞いたようなフレーズでクリムゾンが答えた。しかし、ここはサファリパークなどではない。ただの異世界だ。
「何なら試してみるかYo? 凍える炎も世界を焼き尽くす地獄の業火もなんでもお手の物だZe!」
おいおい、もうちょっと普通の魔法は無いのかよ。被害が大きすぎそうなのしかイメージ出来ないZo! あ、つられてしまった。
「うーん。なんだか物騒なのしかないな! とりあえず今は止めとくよ。街の外とかで広いとこで試してみないと怖いな、それ」
「わかったZe! じゃあ早速行くZe!」
クリムゾンは今にも動き出さんと首を大きく上下に揺すり、翼を何度もバサバサと羽ばたかせている。って、もしかして飛んでくつもりなのか?
「……………………行くってクリムゾンは?」
「勿論付いていくんだZe!」
そういうことじゃないんだが?
「いや、どうやって付いて来るんだ?」
仮にクリムゾンが空を飛べるとしても俺たちは飛べない。それに俺たちが街中を歩き回ってる中、こいつは空を飛んでいるなんて、街の住民からしたら恐怖の対象でしかない。具現化出来るなら消えることだって出来るだろう。俺としては消えてくれないと困る。
「オウ! そう言われればそうだよNa! あんなちっこい扉を潜れるはずがないZe! オレとしたことがうっかりしちまったZe!」
やっと俺の言いたいことを理解してくれたのか、クリムゾンは大きく何度も頷いた。その度に凄まじい風圧が俺たちを襲った。そして、クリムゾンはぐぐぐっと首を天に伸ばし、大きな咆哮をあげた。その直後、現れた時と同じように大きな火柱が立ち上り、クリムゾンの全身を包み込んだ。
「現れるにしても消えるにしても、はた迷惑なやつだな。クリムゾンは。他に方法が無いと今後具現化させるにしても困るな。でも、そうやって、姿を消してくれない、と……?」
火柱が消え去ると、クリムゾンが居たはずの場所には、代わりに一人の女性が立っていた。俺の思考は、目の前の全てを受け入れることが出来ずに、ピタリ、と止まる。
ふわりとした腰まであるほど長く紅い髪に、髪と同じ色をした瞳。キリッとした勝気な表情。エレーナさんよりは少し大きそうな身長に豊満なバスト、そして鮮やかなピンクの乳首……って乳首!
と、俺は焦って裸の女性から視線を逸らした。
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