第33話 嫌われる理由
かなり広め、多分、バスケットコートくらいはありそうな部屋の一番奥、そこが少し高い台になっている。そこにある大きな椅子に巫女と、同じような白い衣装を着た人物が一人座っている。フードは被っていないが、この距離だと顔をはっきりと見ることは出来ない。恐らく、その中心にいるのがフランクとやらなのだろう。
その左右には一人ずつ同じような格好をした人物が立っている。こちらはフードを被っているからおそらく巫女なんだと思う。
ちなみに俺たちの前の人は、恰幅が良さそうな男性だった。何を話しているかは聞き取れないが、何かを依頼しているようだった。目の前には大きな鞄が置いてある。
と、どうやら話が付いたようで、フランクの横に立っている巫女がその鞄と男性から何か小さな物を受け取った。多分あれは魔石だ。巫女はそれをフランクに手渡した。
次の瞬間、フランクの掲げた左手の上にふよふよと生き物のような何かが現れた。遠目だが、蜥蜴のような姿だった。その生き物の口の中にフランクは魔石をひょいと投げ入れる。すぐ後、その魔石を吐き出すと生き物の姿は消え去ってしまった。
その吐き出された魔石はまた巫女の手によって、男性に手渡される。その男性はそれを受け取ると、一礼をして部屋から出てきた。どうやら順番が終わったようだ。
次は俺たちの番なので、俺たちは先ほどまで男性が居た場所らへんで立ち止まってフランクをじっと見上げる。
この距離なら顔もわかる。異世界人だ、との話だったが、アメリカなのかイギリスなのか、金髪の白人のようだった。一瞬、英語が苦手な俺は戸惑ったが、よくよく考えれば異世界の言語とでも会話が出来る。会話は勝手に変換されるなら、相手が英語でも問題ないだろうと思い直した。
フランクもこちらをじっと見下ろしている。何か品定めするような目だ。そして、何度か頷いたフランクはとんでもないことを口にした。
「魔導具を作ればいいのか? 女二人か、俺様の夜の相手をさせてやる。そうすれば魔導具一つ1万クローネまでまけてやるよ」
ああ、こういうことか。俺はエレーナさんの言ったことを
こいつのような奴ばかりだとは思いたくないが、悪印象というのは好印象よりも強く心に残る。異世界人の多数がこれならそりゃ確かに嫌われるわな。
俺がそんなことを考えていると、フランクが何故か大声をあげた。
「なんだ? この小娘。火の最上級精霊であるサラマンダーを具現化出来るこの俺に、そういう態度をとるのか?」
アリアの蔑むような視線に立ち上がって怒りを剥き出しにしてくるフランク。
「ちょっと! アリアちゃん! 止めなさい! フランク様! 今日は魔導具を作って貰いに来た訳ではありません! 精霊との契約をさせて頂きたく……」
エレーナさんは必死にアリアを止めながらも話題を変えた。どうやらその話題はフランクにとってあまり面白くない話だったようだ。
「なに? フンッ! 勝手にしろ!」
フランクはそう言葉を吐き捨てると不機嫌そうにどかっと椅子に身体を投げ出した。しかし、もう俺たちに興味はないようで横の巫女達と談笑を始めた。
エレーナさんは深々と一礼をすると、高台の左側にある扉に向かって歩き出した。俺もエレーナさんと同じように一礼をしたが、アリアはまだ敵意を剥き出しにしている様子だ。
「アリア!」
俺は頭を下げながらもアリアをフランクには届かないほどの小さな声で諌めた。アリアは俺を見てからハッとして一礼をする。
俺はアリアが頭をあげるのを待ってから、エレーナさんを追った。
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