第32話 火の神殿
「ここが神殿よ。こんな感じのが各地にあるわ」
テレビとかでよく見るパルテノン神殿だったか。そんな感じの石造りの建物の前でエレーナさんがそう教えてくれた。
「へえ、なるほど」
俺が神殿と言われて浮かんだ光景とほぼそのままだったので、俺は違和感無く受け入れることが出来た。
「ここを抜けると奥に広場があるの。そこに魔法陣があるわ。でも、その前に神官に許可を得なきゃならない。そこで、ケント君も多分すぐに分かるから少し覚悟しておいて」
「分かるって何を?」
エレーナさんの思わせぶりな口調に俺はつい聞き返してしまった。
「異世界人が嫌われている理由よ。ここの神官は異世界人だから。って言っても大体の神殿の神官は異世界人ね。ステータスが軒並み高いから仕方ないのだけど」
「神官って聞くと要職っぽいけど、異世界人がやってるのか。わかりました。大丈夫です。覚悟します」
要職に付いているだけで嫌われているのか、それとも他の理由もあるのかわからないが、エレーナさんがそういうくらいなら心の準備はしておいた方がいいだろう。
神殿の中に入ると、全身が見えないほど大きい白い服を着て、白いフードを目深に被った人が何人も並んでいる。フードのせいで顔も見えない。巫女といったところだろうか。その中の一人が俺たちに近づいてきた。
「本日はフランク様にどのようなご要件でしょうか?」
「ええ、一人、精霊と契約したくて伺ったのだけれども」
エレーナさんがそこまで言いかけた時に俺はふと思い出した。アリアとは契約の話をしていないということを。アリアも魔法を使えるようになりたいかもしれない。
「あ、アリアはどうする?」
俺の言葉にアリアは首を横に振った。
「いえ、私は。多分ステータス的に契約出来ないと思いますので」
まあ、確かにそういう事もあるかもしれない。アリアがしないと言うなら俺が無理にさせることもない。
「うーん。そっか。じゃあ一人、お願いします」
「かしこまりました。現在謁見中ですのであちらにお掛けになってお待ち下さい」
巫女が指し示す先には長椅子が置いてあった。俺は指示される通りにその椅子に向かった。が、途中でエレーナさんが俺に耳打ちをする。
「ケント君、あの人たちは皆奴隷よ。神官が身の回りの世話を
「え、うそ!」
俺は驚いて振り返ってしまった。顔は見えないが、見るからに子供のような体格の人も何人かいる。明らかにアリアよりも小さい。小学生か、せいぜい中学生くらいの年齢だと思う。エレーナさんのくちぶりからはおそらく夜の相手も奴隷たちにさせていると暗に語っているように聞こえた。それは確かに嫌われる要因の一つなのだと俺は思った。
エレーナさんが覚悟しろと言っていた意味が少しわかった。この世界の結婚や成人の基準を俺は知らない。だが、エレーナさんの言葉から考えると、あれくらいの年齢は正直どうか? と思う年齢なのだろう。ただ、どういう経緯で奴隷になったのかわからない。もしかしたら同情とかで買ってあげたのかも? って無いか。俺より詳しいエレーナさんの口ぶりがああなのだから。
俺はそんなことを考えながら長椅子に腰掛けた。そこからは謁見部屋の中を見ることが出来た。
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