第27話 砕け散った水晶
「お持ちしましたよ! 人使いが荒いんだから……」
ぶつくさと文句を言いながらもその両手には水晶がしっかりと存在している。何だかんだでギルドマスターのガイルさんの言葉には逆らえないのだろう。
「おう! すまねぇな! ところで魔石の鑑定は済んだか?」
ガイルさんは水晶を受け取ると同時にバーネットさんにそう尋ねた。先ほど俺が持ち込んだ魔石のことだろう。しかしバーネットさんは肩を竦めて少し呆れているような様子で言葉を返した。
「あんな量、こんな短時間で終わるはずないじゃないですか?」
「それもそうか、じゃあ引き続き頼むわ」
ガイルさんは水晶をテーブルの上に置くと、片手をあげてバーネットさんに下で仕事をするように促しているようだった。バーネットさんはチラチラと俺を見ていた。どうやらバーネットさんも俺の事が気になるようだ。そりゃエレーナさんの言葉を借りれば、この街を買えちゃうくらいの魔石を持ち込むような人間だ。気にならない方がおかしいか。
「ってそれだけですか? まあいつもの事だからいいけど……」
まだ何か言いたそうにしながらもバーネットさんは部屋を出ていった。階段を降りる音も聞こえる。
バーネットさんの足音も殆ど聞こえなくなるとガイルさんは俺に向き直ってこう話した。
「あいつはこの話を聞いちゃダメなやつだからな。異世界人を嫌ってやがるから」
「な、なるほど」
俺はゆっくりと頷いた。ガイルさんは俺に気を遣ってバーネットさんを追い出したようだった。身体に似合わず気が利くと言ったら失礼だけど、こういう所がないとギルドマスターなんか務まらないのかもしれない。
「さて、じゃあ早速水晶に手を置いて貰おうか?」
俺は水晶に手を置こうとするが、エレーナさんが出した右手に制止させられる。
「あ、ケント君! 魔導具は外して頂戴ね?」
「あ、はい。そうですね」
確かにエレーナさんの言う通りだ。このままだと昨日エレーナさんに指示されたステータスしか表示されない。それじゃ意味は無いから俺は胸元にぶら下がっている魔導具を外してテーブルの上においた。
俺も正直、ステータスに興味があった。表示されている文字がどうなっているか俺には分からないが、言葉で発してくれればわかる。
別にこの二人になら偽る必要も無いと思う。なら単純に興味を優先しても良いだろう。
俺は軽く水晶に手を置いた。
バリーン!
すると水晶は大きな音を立てて割れてしまった。ガイルさんエレーナさんも目を丸くして驚いている。
「こいつは……」
「こんなことって……」
二人とも言葉が続かない。呆然としているようだった。
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