第26話 ギルドマスター・ガイル②
二十畳くらいはあるだろうか。結構広めの部屋に四人で相対し、俺たちとガイルさん達は向かい合って座っている。奥には乱雑に書類が積まれたデスクがあって、手前には二人がけのソファが二つ、向かい合って置いてある。俺とアリア、ガイルさんとエレーナさんがそれぞれ座っている。
「さて、と。話を聞かせて貰おうか」
ガイルさんがゆっくりと口を開いた。俺は何処まで話していいかエレーナさんに無言で指示を仰いだ。異世界人だと話してしまうとガイルさんがどういう態度になるかわからなかったからだ。
そんな俺の考えをエレーナさんは察してくれたようだ。
「大丈夫。ガイルさんは理解のある人だから」
俺はその言葉を聞いてゆっくりと頷いた。エレーナさんがそう言うなら大丈夫だと思ったからだ。
そして俺は手袋を脱いで右手の紋章をガイルさんに見せた。
「俺は異世界人なんです」
「ほう? 見たことない紋章だな」
ガイルさんは俺の紋章を見てそう言った。ギルドマスターだけあって紋章自体は見たことあるみたいだ。それでも詳しい人ですら知らなかった俺の紋章はさすがに見たことはないらしい。
「ええ、この世界に来た時に紋章を確認されましたが、同じように見たことないって言われました」
「ふむふむ、なるほど……」
とても興味深そうに腕を組んで食い入るように何度も頷いている。エレーナさんの言葉通り異世界人に対しての偏見のような物は無いみたいだ。俺は少し警戒を解いても良いかと思いながら話を続けた。
「で、この紋章ですが、どうも最初はステータスが低いんですが、戦闘経験を重ねると逆にステータスが跳ね上がる紋章みたいなんです」
「なに? それ、聞いてないけど……」
今度はエレーナさんの言葉だ。そりゃそうだ。伝えてないからね。聞いてるはずがない。結果的にエレーナさんを騙したことになるけど、聞かれなかったんだから許して欲しいな。
まぁ跳ね上がるという表現が合ってるかはわからないけど、今はわかりやすく伝えるにはそれしかない。
「にわかには信じ難いが、ギルドプレートは?」
俺はガイルさんに促されてギルドプレートを出した。が、意味を知っているエレーナさんは首を横に振っている。
「無駄ですよ。何かステータスを偽造する魔導具とやらを持ってるみたいで」
「なるほどな。なら今確かめて見るしかない」
そうガイルさんは語ると大きく息を吸い込んだ。
「バーネット! 水晶を持ってこい!」
冒険者ギルド全体がビリビリと振動するのがわかる。とんでもない大声だ。バタバタと焦って階段を駆け上がる足音が聞こえる。
バタン!
大きな音を立てて開かれた扉の前には肩をはあはあと揺らしながら息を整えている青年の姿があった。
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