第24話 魔石の山
「はい。こちらが報酬です」
私はにこやかに依頼の報酬が入った袋を手渡した。むっさい男が顰めっ面でそれを受け取った。今日、何度目かわからないが、毎日毎日、まいにちまいにぃち、こうやってむっさい男共の相手をするのが殆どである。危険と隣り合わせのこういう仕事なんだから、腕に自信がある人たちが多いのだからそれ自体は仕方ない。たまぁーにそうでない人を相手に出来ればいい方だ。が、もうすぐ私の一日の勤務も終わる。昨日はこれくらいの時間にカッコイイ少年がふらりと入ってきたんだっけかな?
ケント君は異世界人だ。異世界人は嫌われることも多いけど、それは絶対にその容姿も理由のひとつに違いない。異世界人は皆カッコイイし、カワイイんだもん。ケント君も男性だからカッコイイしか思わなかったけど、もし女の子だったらきっと可愛さに妬けちゃって庇おうとしなかったかもしれないもんなぁ。
ま、女の子連れなのは少し残念だった思ったけど、そもそも私には何も関係ないことだから、そこは気にしても仕方がない。
と、噂をすればカッコイイ少年の登場だ! 後ろにはアリアちゃんがいる。体調は大丈夫そうみたい。アリアちゃんは何か大きな袋を大事そうに抱えている。昨日はあんなの持ってなかったなぁ? 何が入っているんだろう。当面の資金稼ぎか何かで依頼を探しに来たのかな? それならアリアちゃんも居るし、掲示板の方に行くはず?
なんて考えていると受付に座る私の所に一直線に向かってきた。笑顔で軽く手を振ると、ケント君も笑顔で手を振り返してくれた。
「あら、昨日ぶりね? 昨日はお楽しみだった?」
「楽しんでません! あ、いや、考えすぎか。楽しかった、です。昨日はありがとうございました?」
ケント君が顔を真っ赤にして答えた。ま、変な意味に捉えられるように意地悪な聞き方をした私が悪いんだけどね。ごめんね。ちょっかい出したくなっちゃって。
「エレーナさん、ところでさっき拾い集めて来たんでこれの換金をお願いしたくて来ました」
スっと前に出たアリアちゃんがカウンターの上に一つの鞄を置いた。それをひっくり返すと、大きい物、小さい物、大きさや形は様々だが、何十個もの宝石のよう物がカウンターの上に溢れた返った……ってかこれは全部魔石! うそ! なんでこんなにあるの? しかも見たことないくらい大きい物ばかりじゃない!
私は勢いよく立ち上がってしまった。
「何よこれ! 無理よこんなに買い取れないわ! こんだけあればこの街だって買えちゃうわよ! そんなお金あるはずないじゃない!」
私は驚きのあまり叫んでしまった。ガヤガヤとしたギルド内が私の叫び声で一瞬で静まり返り、周りの視線が一斉に集まる。しまった! と思ったが時すでに遅し。皆がカウンターの上にある魔石の山に気付いてしまった。すると次第にざわめきが広がっていくのがわかる。この異常な量の魔石を見て驚かない者などいないからだ。
私はケント君の耳元でこう囁いた。
「ちょっと! 魔石はこんな石ころみたいに集められないわよ? ケント君? 君は一体何者なの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます