第23話 魔物狩り②

 パァンッ!


 大きな破裂音が辺りに響き渡り、その音に驚いた鳥がバサバサと飛び立ちウサギやリスたちが慌てたように逃げ回る。


「あ、あれ?」


 目の前にいたはずの魔物の姿が一瞬で消え去った俺は戸惑った。魔石すらないのだから倒せたかどうかもわからない。転位魔法のようなもので逃げられたのかもとも思ったが、当たった感触はあるし、多分そうでもないはず。どっかに飛んでいったのかと思って周りを見渡しても何もないのだから余計に戸惑った。


 すると、先ほどの音に気づいたようで一匹の猪のような生き物が俺にズシン、ズシンと近づいてくる。角も生えているし、牙の生え方も普通の猪と同じじゃないし、比較にならないくらい大きい。その巨体は岩と言ってもいいくらいだ。こいつも恐らく魔物だろう。と、俺が観察していると、辺りの木々を薙ぎ倒し、俺に向かって突進してきた。


 先ほどと同じように横っ飛びで避けた俺は、今度はダメ元とばかりに出来る限り弱い力で手刀を振り下ろした。まさかこんな弱さで効くはずがないとばかりに。


 しかし、俺の予想とは反して俺の振り下ろした手刀は、まるで豆腐でも切ってるかと錯覚させるくらいすんなりと魔物の胴体を真っ二つにしてしまった。一瞬で息絶えた魔物は今度はすぐに手のひらより少し大きめの魔石へと姿を変えたのだった。


「え? これで充分なの?」


 俺は魔物の弱さに驚きの声あげてしまった。これ以上出来ないほどの手加減で倒せてしまったからだ。いや、本当は俺が強くなりすぎたのだが、ちょっと実感が湧かないくらいの差だった。


「とりあえず、はい」


 俺はアリアの元に戻り、拾った魔石を手渡した。今日のアリアの役目は索敵と荷物持ちだ。荷物は俺が持つと言ったのだが、私はいらないんですか! 役に立たないんですか! なんて泣きそうに言うものだから折れるしかない。


「ありがとうございます! 大事にしまっておきます!」


 アリアは手提げ鞄のような物に魔石を入れて大事に両手で抱え込んだ。


「とりあえず魔石は手に入れたし、どうしようかな? まだ近くに魔物の気配はある?」


 一応目的の物は手に入った。これを売れば恐らく数日は過ごせるだろう。でも、せっかく来たんだから近くに魔物がいるならもうちょっと魔石を手に入れておきたいと思って、俺はアリアに魔物の気配が近くにあるか尋ねた。最悪無いなら帰るしかない。


「ええ、あります! あっちの方に、何匹かいるかも?」


 何匹か、か。集団相手は少し不安があるが、今の感じなら大丈夫かな?


「よし、案内してくれるか? アリア」


 アリアは黙って頷き、魔物に気付かれないように忍び足で歩き出した。俺はそのアリアの後を付いて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る