第18話 大事な話
しばらく街を歩いた俺たちは大通り沿いの飲食店で休むことにした。通りにいくつかテーブルと椅子が並べてあり、小洒落たカフェみたいだ。
「ったく! あの泥棒猫ったら! エレーナって言ったわね! 私がケント様をお守りしないと!」
アリアの怒りはまだ収まらないようで、まだブツブツ文句を言ってる。猫耳のアリアが泥棒猫ってのもなんか変な感じだけど、ここは突っ込んでる場合じゃない。と、その時、
「あ……」
俺はとある人物と目が合った。向こうも気がついたようでこちらに手を振っている。とある人物とは、エレーナさんだ。
ぎこちない歩き方でこちらに近づいてくる。アリアからすると後ろになるので、まだアリアは気づいていない。
「ケント君じゃない? アリアちゃんも、お食事中?」
背後から声をかけられたアリアは驚いて振り返る。エレーナさんの姿を確認すると、ガタッっと勢いよく立ち上がった。
「ちょっと! なんでここにいるのよ! さては後をつけてたな! ケント様! ストーカーですよ! それにしても私が気づかないなんて、きっと何か特別な能力でも!」
「アリア、ちょっと落ち着いて! アリアが怒ってるからわからなかったんだよ! それにエレーナさんは後をつけてた訳じゃないのは見ればわかるよ」
アリアは獣人だけに耳も鼻も良いらしい。でも、一つのことに集中してしまうと常人以下になってしまう。だから気づかなかったし、エレーナさんのあのぎこちない歩き方じゃ後をつけるなんて無理だ。
「ちょっとご一緒いいかしら? お話したいことがあるの。二人にとって多分大事な話」
「なんで貴方なんかと!」
アリアは拒否の意思を示したが、俺は大事な話とやらが気になった。俺がこの世界に来てまともに話せた初めての人間だ。アリアもシンシア様も魔の森に篭っていたから正直、新しい情報に疎い。話を聞くことはメリットがあると思う。
「まあまあ、アリアも落ち着いて。お話くらいはいいんじゃない? 大事らしいし」
俺が宥めるとアリアは少し悲しそうな表情を浮かべた。嫉妬かな? でも、ごめん。やっぱり情報は大事だ。
「ありがと、よいしょっと」
エレーナさんが腰掛けた。やっぱりその様子を見る限りどこか異常があるみたい。
「エレーナさん、足が悪いんですか?」
「ええ、昔のことなんだけど、遺跡を探検中に魔物にやられてね。ほら……」
エレーナさんが長いスカートを捲ると右脚は木の棒だった。その痛々しさから、俺は興味本意で聞いてしまったことを申し訳なく思った。
「すいません。でも、遺跡を探検ってエレーナさんは冒険者だったんですか? でも、仲間に回復魔法を使える人はいなかったんですか?」
「やっぱり……」
なんか変なことを言ったのかな? エレーナさんは一つ呟くと黙ってしまった。何か考えている様子だ。
その後エレーナさんは身を乗り出して小声で俺に尋ねた。
「一つ聞きたいんだけどケント君、貴方異世界人じゃない?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます