第12話 結界

「あれ? アリア?」


 よくよく周囲を見渡すと、先ほど殺したばかりのキツネも見当たらなかった。木々の様子も少し違っているように感じた。


「そうか、結界か……」


 俺はすっかり忘れていた話を思い出した。いや、気にすることが無かった、と言った方が正しいかもしれない。

 最初にアリアが案内してくれた時も、シンシア様とお会いした時もそういう話を言われた。弱い者しかここ・・に入れない、と。何も気にせずにシンシア様の元へ辿り着いてしまったから、意識をすることは無かった。俺はその結界の中に入れるほどの弱さ・・だったということを。

 しかし今は違う。弱体紋が覚醒し、俺はステータスが高くなってしまった。つまり俺はもう入れない強さになってしまったということだ。だから結界の外に追い出されてしまったのだろう。


 多分、今まで居た空間は次元が違うというか、座標が違うというか、見えない・・・・とかじゃなく、知っていても入れないというようなものなのだったのだろう。

 俺は一瞬、今までの出来事が夢だったのかとも思ったが、アリアに作って貰ったこの服と手袋は消えていない。今日までの出来事が夢ではないことの証明だ。


「アリア、シンシア様……ありがとうございます」


 俺は深々と頭を下げた。二人が居なかったら俺は確実に死んでいたからだ。感謝してもしきれない。直接お礼が伝えられないのは残念だが、事情が事情だ。そこは諦めるしかない。


 俺がお辞儀をしながら感傷に浸っていると、背後から声がした。


「ケント様! おめでとうございます!」


 振り返ると居ないはずのアリアが立っていた。何故だ?


「あれ? アリア?」


「ここなら結界の外なんです。ここまで来ればケント様とお話も出来ます!」


 そういえばそうか。長い期間経ってしまってすっかり忘れてしまっていたが、俺はアリアと出会えた。その時はまだ魔物と戦うことは苦としなかったくらいにはステータスが高かったはず。俺はもう中には入れないが、アリアは外に出れるんだ。アリアが出てきてくれれば、俺はアリアと話すことは出来る。


「アリア、ありがとう。君のおかげだ。シンシア様には直接お礼を言えないから君が伝えてくれないか?」


 しかし、アリアは首を横に振った。


「とんでもないです。ケント様が頑張ったから強くなれたんです。私は手助けを少しさせて頂いただけです。あと……シンシア様にお伝えはしません」


 俺はアリアの言っている意味がわからなかった。

 アリアは少し黙ったあと、決心したように口を開いた。

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