第8話 猫耳少女アリア

「あれ? 今まで気づかなかったけど、猫みたいな耳がある」


 お辞儀した少女の耳には猫みたいな耳が付いていた。ピンクっぽい色の髪にちょこんと乗っかる猫耳。可愛さ大爆発だ。


「ええ、私は獣人なんです」


「おお! さすが異世界!」


「異世界? どういうことなんですか?」


 猫耳の少女が首を傾げた。そりゃそうか。いきなり異世界とか言われてもわかるわけがない。


「ああ、俺はこの世界じゃない世界から召喚されたんだ。なんか紋章の力が欲しいって」


「異世界かぁ。シンシア様からよく聞く異世界なのかなぁ?」


 前言撤回。わかってた。でも、意外とこの世界では異世界人は一般的なのかもしれない。シンシア様とやらは知っているようだし。


「シンシア様って?」


「あ、シンシア様は私がお仕えするご主人様です。シンシア様の身の回りのお世話をすることが私のお役目なんです!」


「へぇ、なるほど」


 この猫耳少女はそのシンシア様のメイドみたいなもんかな? メイド服は来てないけど。これだけ可愛けりゃ似合うだろいけどな、残念……って何考えてんだ。

 俺は突然降って湧いた考えに首を左右にブンブンと振った。


「シンシア様は記憶がない私を拾って下さったお方なんです! 命を救っていただいた貴方はシンシア様の次に感謝してます! っとそう言えばお名前をお伺いするのを忘れてました。私はアリアと申します。宜しければお名前を教えて頂けますか?」


 っとそう言えばお互い名前も知らなかったな。アリアか、良い名前だ。


「俺は、そうだな。ケント……そうケントでいいよ」


 ゲームや小説で良く見る異世界では苗字は貴族が持ってたりするもの。実際アリアの苗字は知らないし、無いかもしれない。シンシア様とやらも同じだ。別に苗字を伝える必要も感じなかったので、俺は下の名前だけ伝えることにした。


「ありがとうございます! ケント様! 宜しければシンシア様にお会いして頂けませんか?」


 様を付けられて呼ばれた俺は少し照れた。だが、俺の事をどう呼ぼうと無下に変えることはしなかった。それはアリア自身の問題だしな。俺が慣れればいいだけの事。


「ケント様って。まあ、いいか。勿論喜んで。でも、もう少し休んでからでもいいかな? ちょっと骨も折れてるみたいで」


 俺は苦笑いをしながら腕を持ち上げた。すると、アリアが申し訳なさそうな表情になった。


「あ、すいません。私は魔法が全然使えないもので。シンシア様治せるかもしれないんですが」


「アリアが謝る必要はないよ、って魔法? そう言えば異世界だし、魔法もあるのか」


 俺はつい魔法という言葉に反応してしまった。この世界には魔法があるということだ。猫耳少女に魔法ときたら実にファンタジーな世界真っ只中だ!


「シンシア様はかつて御高名な魔導師だったらしく、色々な魔法を使えるんです!」


「なるほど。ならちょっと無理してでも早く会った方がいいか。魔法で治してくれるかもしれないなら」


 そう言って俺はゆっくりと立ち上がった。俺の様子を見届け、ゆっくりと歩みを進めるアリアについて歩いていった。

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