雨と魔法
ユキ丸
外は雨。
雨が降っていたので傘を差していた。なぜ、こんな面倒なことをしなければならないのだろう。傘を片手に持っていると、魔法のスティックを抜くことができない。こんなときにもしも、もしもだよ、ゴブリンが現れたらどうしようと云うのだろう。全くもって傘なんて厄介だ。
ぼくは学童の帰り道。お母さんについて歩きながら、傘をすり抜けて降ってくる雨に、舌打ちばっかりついていた。傘なんて嫌いだ。もっと云えば、雨の日なんかに出かけたくない。でも、雨の日に限って、いたずらなゴブリンが現れることがあるんだ。そいつをぼくがやっつけなければならないんだ。ぼくは摺り足で、水溜まりを蹴っていた。
お母さんには秘密だけど、ぼくは元魔法使いなんだ。もう、魔法なんか忘れちゃったけどね。昔は、雨の日なんか、傘も長靴もなしで飛び回って戦うことができたんだ。でも、ぼくはもう魔法使いをやめたから、魔法も忘れちゃっただけなんだ。
ぼくがぶつぶつ言っているとお母さんが云ったんだ。
「ほらごらん、雨を止ませる魔法だよ」
見ると、雨が上がって、日が照り出したんだ。
「おかあさん、魔法使いみたい」
するとお母さんは、
「だってわたしは、元魔法使いさんのお母さんだものさ」
と云って笑っていたんだ。
お母さん、いつから知っていたの? それとも本当にぼくは魔法使いだったのかな。いつの間にか傘が消えていた。
(了)
雨と魔法 ユキ丸 @minty_minty
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます