背中の張り紙

K.night

第1話

小学生低学年の頃、私はとても病弱で、保健室に登校しているようなものでした。


とにかくご飯が食べられなくて、すごく痩せていて、走ったりするだけでへたり込んでしまう子でした。


それでも教室でみんなと授業が受けたくて、がんばってご飯を食べて教室に行くと気分が悪くなってそのまま机で吐いてしまい、その後処理を同級生ししてもらったりして、とにかくみんなに申し訳なかったのを今でも覚えています。


ある時、教室で具合が悪く机に突っ伏しながら授業を受けていたら、誰かが私の背中に紙を貼りました。


書かれていたのは「ヨワヨワマン」とか「バカ」とかそういう言葉だったと思うけれど、当時の私にとっては「その通りだな」と思うだけの言葉だったように思います。


そんな私に張られた紙を見て、同級生が指をさして笑ったり、楽しそうにしていたのが私は嬉しくて、紙を剥がさず、ランドセルも背負わず、そのまま家に帰りました。


「今日は私みんなを笑わせられたよ。」って嬉しい報告をお母さんにするつもりで帰ったら、お母さんは私の背中に張られた紙を見て、怒り狂って学校に電話をかけていました。


私は「傷ついてないよ、嬉しかったんだよ。怒ることじゃない。」といったけれど、そんな言葉になぜかお母さんには泣かれてしまいました。


次の日、学校のホームルームで私に起こったことが話され、みんなすごく重い雰囲気になって、すごく申し訳なかったのを覚えています。


私の背中に紙をはった同級生の女の子が泣きじゃくりながら私に謝ってきたことの方が、私は何十倍も傷ついて、辛くて、「なんで余計なことをしたの!」ってお母さんに怒りたかったけれど、その方がおかしいんだって、そういわれた気がしたから。


あの日、家に帰って、布団に丸まって一人で泣いたのは、今この時、この文を書くまでの私の細やかな「秘密」でした。






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背中の張り紙 K.night @hayashi-satoru

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