ROUND 2 勇者と邂逅
「すいやせーん」
まずは外から声をかけることにした堕天使。下手に中を覗くといいことが無いのは基本である。
「こーんにーちはー」
『推奨:80㏈以上』
「何それ......」
堕天使はおつかいぐらいの下っ端だったので知識はそんなに多くない。
もう少し腹から声出せってことかな?と意気込んだ。
「ちゃーす!」
『照会:邪神の使徒』
「もっと?」
確かにアイツらは隕石でも落ちてきたかぐらいの騒音を口から出すけども。堕天使は眉を顰めながら右腕を見やった。
思いっきり息を吸い込む。
「ん"えヴぉっ!」
むせた。帰って良いかな。堕天使は唾液と鼻水と少しの涙をまき散らしながら蹲った。
ちょっとだけ隙間に向けて声を出す。
「こんちわー!」
「はーい!」
何かすっごいウキウキした勇者の声が聞こえてきた。直接声を聞くのはこれで2回目だが、どちらも情緒が大変な感じである。普通の声を聞きたい。
「ようこそ宇宙へ轟けサーカスへ!座長は俺だ、勇者でもあるぞ!」
好青年が顔を出した。甘いマスクで道行く女を虜にする辺りにポテンシャルは感じる。だが、それ以上に恰好が......
「あどうも」
「ん?お嬢さん……天使のコスプレかな?」
「ンヴゥッ(吐血)」
「どうしたんだい!?」
てめえのせいだよ!!!!!!!!
顔面に鉄握をかましたくなる心境を懸命に圧し殺す堕天使。そもそも眼前のキチのせいで堕天させられたのだ。え、ここで始末しても?
「隠岐にNASALaz」
「イントネーションがすごいけど」
「穂酒九頭」
「誰だいそれは」
「んー(嘔吐)」
ヤバい胃がもたない。堕天使は吐瀉物を埋めて処理しながら改めて交流を再開する。
「んっ、ん。改めて」
「お客様だな!」
「あの」
「やはりそうだろう、ここまで1人で来たのかい?怖かったね、でももう大丈夫だ!何故って?ここが楽しい楽しいサーカスだからだ!」
「あ」
「さあそうと決まれば早速準備準備!たった1人のお客様へ捧げるサーカスもまた良いものだ!」
「えと」
「どうぞ中へ!」
「アッハイ……」
無理だなこれ。
空の客席に1人腰掛けつつ、堕天使は再び死んだ目で壇上を見上げた。
しかし実際、途中でゴタゴタしててこのサーカスがどうなったか全く分からない状態なのだ。良い機会だとも感じ、
「大変お待たせ致しました!間もなく開演でございます!」
少し期待をしてしまい……堕天使は少しだけ口角を上げた。
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