ROUND 1 サーカス狂いの勇者とは

 とある世界に出現したのは世紀末に憑りつかれた邪神である。

 それを見て、主神は情報を集めて対策を練った。その対策で勇者召喚の儀を行わせた。そして勇者が召喚された。


「ふざけんな!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 その第一声が。


「サーカス団じゃねえのかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 であった。

 召喚で色々と集められた諸氏は呆気にとられて、それから自身を取り戻して話をする。

 結果、説得は相成った。


「俺はサーカスの伝道師になる!」


 嘘だろ。

 思考が再度一致した。

 勇者の主張を改めて纏める。


 ・サーカスが無い世界とかお前舐めすぎ

 ・ライオンはいる?は?ライオンだよライオン

 ・ピエロは?いねえんだろ!?吐けやボケナスが!

 ・じゃあ俺自身がサーカスを広めてやる!

 ・俺こそが神に遣わされたサーカスの伝道師だ!


 以上。

 異常。


 その後引き取り手の王国に行ったが訓練をやろうとしてもジャグリングであったりライオンの調教しかやらないことで......実質刃物の取り扱い及び騎乗用生物の調達ということになりそれが続けられることとなった。

 それから半年が経った頃、勇者はサーカス団を率いていた。その名も......




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「なんだっけ?」

『照会:宇宙に轟けサーカス』

「そうだった、轟くじゃないのがポイントだよね。願望が滲み出てて良いなぁ......ははっ」


 地点A......目的地へ向けて歩く1人の姿。

 黒く染まった翼、ツインテールにしたこれも黒染めの長髪。そしてぱっちりとした目は『澄んだ蒼』と『面倒くさい』が混じっている。勇者として選ばれる程に強大な能力を秘めている、しかしサーカスにしか興味がない......そんな厄介者を見張る監視者。

 言わずと知れたPretty堕天使である。


 しかしそんな堕天使の右腕には......硬く鈍い色を示す手甲ガントレットが付いている。可憐な姿に到底似合わないソレは、手首の液晶部から緑色の燐光を放っていた。

 ぐ、ぱ、ぐ、と手を握る堕天使。

 いややっぱり力は抜ける。めんど。だる。


 しかしやることはやらないと......


 眼前に見えてきた大きな移動式テントに目を向けると、気合を入れ直して。






「帰りたい」

『審議拒否』

「そんなぁ」


 やっぱり抜けちゃう。

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