第43話 ~ルミナの小説~ 採点不能

~ルミナの小説~


 私の名前は、遊佐ルミナ。


 私がスタバで友達とタピオカを飲んでいたら、女神さまにお願いされて、異世界転生して世界を救う勇者ルミナになっちゃった!

 急でびっくりしちゃった!


「やぁっ!」

「てやぁっ!」

「とりゃぁっっっっ!」


 たくさんの強敵を倒し、高難度クエストをこなして成長した私は、今はラスボスである悪の魔王ブラックフィールドと戦っていた。


 魔王ブラックフィールドは、品性下劣で傲岸不遜で悪逆非道で無慈悲で無知蒙昧で不寛容な、まさに悪魔の使いである。


 キンキンキンキンキンキンキンキン!

 激しい応酬が繰り広げられる!


 キンキンキンキンキンキンキンキン!

 グサァ!!


 しかしついに、私の聖剣が悪の魔王の腹を貫いたのだ!


「聖光開放! ライトニング・ブラスト! 女神より授けられし最強の光魔法に威力、とくと食らうがいい!」


 私は聖剣を魔王ブラックフィールドへと突き刺したまま、渾身の力を込めて聖光魔法を発動させた!


 ゴオオオオオオオオオ!


 すると魔王ブラックフィールドの身体は、聖なる光によって内部から焼き清められ、


「グフォア……!」


 断末魔とともに、塵と消えたのだった!


「悪は滅びた! 世界は平和を取り戻したぞ!」


~完~



「って、待て待てい!」

 ものの5秒で読み終えた俺は、思わず口を開いた。


「どうしたんですかマオくん?」


「どうしたもこうしたも、転生してわずか数行で、いきなり魔王と戦って、さらに数行で倒しちゃってるんだが!?」


 しかも敵の魔王ってズバリ俺かよ!

 しかも前世の展開まんまじゃん!


 腹を貫かれて身体の中から焼かれた痛みを、リアルに思い出しちゃったじゃないか!


 そうか、これもルミナの作戦か!

 俺が思わずあの時刺された場所を押さえたら、それで魔王だと断ずるつもりなんだな?

 悪いがその手には乗らん!


 それと、頼むぞロゼッタ。


 お願いだから前世の話とか余計なことは言わないでくれな!

 俺は心の中でロゼッタにお祈りしながら、ルミナへのツッコミを続ける。

 

「書き出しだけとはいえ、いきなり長編は難しいと思ったので、あえて短編で勝負しました」

「短編というか、掌編というかショートショートというレベルじゃないか?」


「実は私、あまり考えるのが得意ではなくてですね……」

 得意科目:体育と豪語するルミナだけあって、どうやらルミナの創作能力はあまり高くはないようだった。


「でもでも、1作書き上げたという意味ではすごくないですか? Web小説なんて半分以上はエタっちゃうんですよ?」


 そこで、遅れて読み終えたロゼッタが顔上げて言ってくる。

 すごく嬉しそうだった。


「たしかに作品を書き上げたことはすごいし、異世界転生して魔王を倒すというストーリーもちゃんとある。すごいかすごくないかで言えば、俺もすごいとは思う。思うんだが……」


「ほんとですか? わわっ、マオくんに褒められちゃいました♪」

「よかったねー、ルミナちゃん」


「それでもさすがに数行で魔王と戦い、さらに数行で魔王を討伐するのはさすがにどうなんだろうか……」


「もー、魔王さまってば。初めてなんだからそんなもんですよー。そういう魔王さまはどうなんですか?」


「俺か? なら次は俺の小説を披露するとするか」


「わーい、魔王さまってば、すごい自信~!」

「手ごたえがあった感じですね?」


「まぁ見てのお楽しみだ。なかなかの力作だぞ。気合を入れて読んでくれ」


 俺は自信とともにそう告げると、意気揚々とライングループに自作小説を投稿した。


 その内容とは――

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