第42話 初めての執筆!
それからも俺たちは放課後の魔会の活動を精力的に行った。
「前々から話し合っていたように、今日は初めての執筆に挑戦しようと思う」
俺は厳かに宣言すると、表紙に「魔会活動」と書かれたファイルから「お題」と書かれた紙を机の上に置いた。
お題は昨日3人で話し合って決めたものを、それを家のパソコンでプリントアウトしたものだ。
別に紙にしなくても言葉だけでも十分なんだが、敢えてプリントアウトして形にしたのには、もちろん理由がある。
後日、活動実績の一つとして生徒会に提出することもあるかもしれないと考えたからだ。
なにせ俺たちは素人集団。
もしかしたら秋の文化祭にまともな成果物を出せないかもしれない。
その時にセカンドアピールとして「こんなことをやりました」という活動実績を提示するために、今から形に残しておいて損はないのだ。
こういう「もしも」を常に考えておく、これこそが真の危機管理というもんなんだよなぁ。
(ここまで0.5秒)
「やっぱりー、インプットだけじゃなくてー、アウトプットもしてみたいですよねー」
やる気満々でノリノリのロゼッタと、
「小説を書くなんて初めての経験です。うまく書けるでしょうか。書き方も習ったことはありませんし」
根が真面目だからか、やけに真剣な顔をしているルミナ。
「ははっ、みんな初めてなんだから、すごいものを書く必要はないさ」
「それはそうなんでしょうけど……」
「そうだな。例えばサッカーを始めたとする。でも初日からいきなりすごいシュートが打てるわけじゃないだろ? 千里の道も一歩からってな。みんなヨチヨチ歩きから始めるもんだと思うぞ」
俺はルミナを安心させるような例え話をした。
「あ、なるほどですね」
「書き方にしても、いきなりきれいなシュートフォームを習うよりも、まずはボールを蹴ってみてなんとなくの感覚を覚えるのが、いいと思うんだよな。もちろん小説の書き方を学ぶのも、おいおい必要になってくるとは思うけどさ」
「少なくともそれは今ではないということですね。納得です」
「さすが魔王さま、たとえ上手ぅ! やるぅ!」
「というわけで、改めて確認するな。この前みんなで話し合って決めたように、お題は『自分が異世界に転生したらという設定で、序盤の書き出しを書いてみよう』だ。じゃあ早速、とりかかろう。気楽にさ」
というような流れで、俺たちは初めての執筆に挑戦した!
この部屋にはパソコンがないので、それぞれのスマホで執筆する。
1時間後――。
「さてと、とりあえずここで区切ろう。どうだろう、2人とも書けたか?」
「一応は。あんまりなんとも言い難い感じですが……」
やや自身がなさそうなルミナと、
「バッチリ書けました~!」
超ドヤ顔っているロゼッタ。
「……ほんとかよ?」
「チッチッチッ! 魔王さま、この中で一番ラノベに精通しているのはわたしですよ?」
「それは、そうなんだけどさ」
前世の経験的に、ロゼッタの自信ほど当てにならないものはないっていうか。
さすがに言わないけども。
「そんなことより早く発表会をしましょうよ~! わたし、みんなの書いた異世界ラノベが早く読みたいですぅ」
「じゃあ順番にライングループにコピペして、それをみんなで読んでいこう。順番は公平に、じゃんけんで負けた人からにするか」
「ふぅ、トップバッターにはなりたくないですね」
などと不安がっているルミナには構わず、
「じゃあいくよー! 出さなきゃ負けよー、最初はグー♪ ジャンケンポン!」
ロゼッタがぐいぐい話を進めていく。
俺とロゼッタがパーを出し、ルミナはグーを出した。
「わ、私からですか……緊張します」
「ルミナちゃん、気楽に気楽にー。楽しもうよっ」
ロゼッタの邪気のない笑顔に背中を押されたのか、
「ではいきます! えいっ!」
ルミナが気合とともにライングループに投稿した。
その内容とは――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます