第40話 感想会で意気投合するロゼッタとルミナ。そしてまたもや失言…。

 読み終えた後は、3人での感想会に移る。


 今日ルミナが読んだことで3人が全員、読んだことになる「魔王と勇者のラブコメ」がメイン議題だ。


「対立していたはずの2人が、戦場で刃を交える中で互いに惹かれ合い、恋に落ちる。ロマンティックが止まりませんね」

「だよね~! ルミナちゃん、わかってる~!」


「言うなれば、異世界におけるロミオとジュリエットです」

「うんうん~! 魔王さまと勇者はロミジュリなんだよね~!」


「ふぅ、いいなぁ。こういうの、憧れちゃいます」

「わたしも~! 憧れるよね~! これぞ愛って感じで~」


「もちろん実際に同じようなことをするとなると、本当に大変なんでしょうけど」

「でもだからこそ、お話が盛り上がるんだよね~!」


「同感です。2人の前に立ちふさがる壁が高ければ高いほど、問題が大きければ大きいほど、2人の恋物語もまた盛り上がるというものですから」


「そうそう~! なにせ魔王さまと勇者だもんね~!」


 完全に意気投合しちゃっているルミナとロゼッタ。


 かつては敵対していたとはいえ、今は同い年の女子高生。

 女の子同士で気が合うのかもしれない。


「マオくんはどう思いますか?」

 と、ここでルミナが俺に話を振ってきた。


 魔王と勇者というキャラ設定は、俺とルミナの間において最もセンシティブで致命的なワードである。

 藪をつついて蛇を出すことがないように、ここは無難な答えでサラッと流そう。


 そう思った俺が、無難な答えを返そうとするよりも一瞬早く、ロゼッタがおそらく何も考えずに脊髄反社で口を開いた。


「魔王さまは現実味がないって言ってたよね~。俺の過去の経験と照らし合わせたら、この話にリアリティを感じないって。ねー?」


 おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉい!!!!

 なにが「ねー?」だ!

 それじゃまるで俺が昔、魔王をやっていたみたいに聞こえちゃうじゃないか!!!!!


 たしかにこの前、俺は感想会でそうコメントしたがな?


 でもそれは勇者ルミナスの転生体たるルミナがいないからのことであって!

 ルミナがいる前でそれ言っちゃったら、疑われるに決まってるだろうがよぉぉぉぉぉ!!


「現実味? リアリティ? 魔王と勇者がですか?」


 ルミナがつぶやきながら、ロゼッタから俺へと視線を移した。


 いっやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 ルミナが露骨に疑ってきている!!!!!!!!!


 まぁそりゃ疑うよな!

 俺がルミナの立ち場でも疑うよ!

 明らかにあり得ないこと言ってるもんな!


 っていうかロゼッタ!

 そんなこと言ったらこうなるだろうって、ちょっと考えたらわかるだろ!?


 お願いだから、その「ちょっと」を考えて欲しいって、俺は常日頃から言っているんだよぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!!!(心の中で魂の慟哭)


 いや、今はそんなことを考えている場合ではない。


 言い訳を考えろ、思いつけ、捻り出せ、思考しろ、無理やりにでもこねくり出せ!

 出ないと俺は魔王とバレて死んでしまう!


 なにか、なにかなにかなにか――!


 ピコン!

 そういえば小さい頃に――。


(ここまで0.5秒)


「ああ、その話な。ええっと、俺が幼稚園の頃に保護者向けの発表会で劇をやったんだけどさ」


 俺はとっさに思い付いたそれっぽいエピソードを語り始めた。


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