第38話 失言の女王ロゼッタちゃんと、心労を重ねる魔王さま
俺はルミナとロゼッタとともに魔会の中心たる旧・天文部部室へと向かった。
「わわっ、こんなしっかりとした部室を貰っているなんて、すごいですね!」
部室に入るとすぐに、室内をぐるりと見渡したルミナが感嘆の声をあげた。
「でしょでしょ? さすが魔王さまだよね~!」
魔王さまと言ってはいないぞ!
マオさまと言ってるんだからな!
俺は自分自身を納得させるように、心の中で何度も呟く。
さりげなくルミナの顔色を窺うと、特に反応はしていないようだった。
もちろん内心がどうかは分からないし、ルミナもルミナで今の俺の反応を見ている可能性があったので、俺はすぐに視線を外した。
ルミナの前で「魔王さま」と呼ばれるのにも早く慣れないと、そのたびにメンタルが削られて、やばいことになってしまいそうだ。
「さすが、と言うからには、マオくんがなにか特別なことをしたんですか?」
「なんかね、生徒会にプレゼンしたんだって~! すごくすごくない?」
まるで自分のことのように誇らしげに語るロゼッタ。
こういう無害な時だけは、慕ってくる後輩って感じで可愛いんだけどなぁ。
ちょっと目を離すと、すぐに失言するからなぁ。
「プレゼンしただなんて、すごいですね」
「あはは、別に大したことはしてないよ。生徒会役員の人とちょっと意気投合しただけ。そしたら思いのほか、いい部屋を割り当ててもらえてさ。ラッキーだったよ」
俺があまり有能だと思われると、ルミナは俺が魔王であるという疑いを強くするだろう。
魔王ブラックフィールドの有能さは、勇者ルミナスとして直接相対したルミナは誰よりもよく理解しているはず。
よって魔王疑惑を弱めるためにも、あまり成果は誇らずに、運がよかったと結論付けておく方が得策だ。
「もー、魔王さまったらー、昔から交渉力はすごかったじゃないですかぁ。みんなを上手くまとめてたしぃ。謙遜なんてらしくないなぁ」
だからそういうこと言うのやめてくれないかなぁ!
俺が今、さりげなく自分下げしているのを、少しは汲み取ろうとしてくれてもいいと思うんだよぉぉぉぉ!
「昔から? みんなをまとめていた?」
ルミナが小さくつぶやいた。
くうぉぉおああああ、逆に疑われてしまっているじゃないか……!!
ロゼッタのバカバカバカバカバカバカバカバカ!
しかし心の中でバカバカ言っていても解決はしない。
過去は1つだが、未来は無限大だ。
俺は高校生活を生き残る未来を勝ち取ってみせる!
俺は瞬時に脳をフル回転させて、なんとかそれっぽい言い訳をひねくり出す。
「お、俺って結構リーダー気質でさ? だから自然と昔からみんなの中心だったっていうか! 自分で言うのもなんだけどさ、あはは~!」
「今のマオくんを見ていればそれも納得ですね。実際に魔会を立ち上げてしまうんですから。行動力もすごいです」
はぁはぁはぁ……。
なんとか誤魔化せたぞ。
まったく、部室に入っただけでこれとか先が思いやられるぞ。
余計なトークをすればするほど、何も考えずに話すロゼッタが失言する可能性も高くなる。
ここはさっさと話を切り上げて、魔会の活動に入った方が安全だ。
ラノベを読んでいる間はロゼッタも失言をしないからな。
「じゃあ早速、始めようか。とりあえず適当に座ってよ」
俺が昨日と同じ席に座ると、ルミナは迷うことなく俺の右隣へと座った。
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