第34話 感想会
一緒に読もうと覗き込むように肩を寄せてくるロゼッタに、なんとも言えないこそばゆさを感じながら、俺は1時間ほどでロゼッタお勧めの「神龍の巫女」を最後まで読み終えた。
(「神龍の巫女」
https://kakuyomu.jp/works/1177354055276095892/episodes/1177354055276113697)
「OK。読み終えた」
俺は本を閉じると、机の上に置いた。
「早かったですね?」
「ラノベ1冊を読むくらい、こんなもんだろ?」
「わたしはこの本を何度も読んでるので、それくらいでも読めなくはないですけどぉ。普通は初見だと2,3時間かかると思いますよ? ふふふ、さすがは魔王さまですね!」
「魔王は関係ない――こともないか。前世の記憶を取り戻した前と後じゃ、明らかに頭の回転スピードが上がっているしな」
「わたしはぜんぜん変わりませんでしたね(*'ω'*)」
「ほんと変わってないよな、ロゼッタは……」
「それでそれでどうでした?」
ロゼッタが早速、感想を尋ねてくる。
ロゼッタの目は、それはもう期待に満ちたキラキラとした目をしていた。
早く俺の感想を聞きたくて仕方ないのだろう。
「流行りの追放展開とか、ちょっとコメディに寄った最後のオチとか色々面白かった点はあったんだが、一番は主人公のクレアの頑張りっぷりが良かったな」
「ですよね~! 一生懸命に頑張るヒロインって、いいですよね~! 萌えますよね~」
「過去のいきさつや損得勘定を横に置いて、神龍の巫女という自分にしかできないお役目に全力を尽くす。そんなクレアの姿が実に美しかったよな」
「そうそう、そうなんですよ~! 聖女の地位を剝奪し追放した相手であっても、平和のために自分のお役目を全する姿が、尊くて尊くて~~!」
本の話でおおいに盛り上がる俺とロゼッタ。
適当に口から出まかせで作った同好会だったが、こういうのは結構悪くないなと、思う俺だ。
というのも俺は魔王であると同時に高校生でもあるわけで、つまり同世代と共通の話題で盛り上がりたいアオハルなお年頃でもあるのだ。
しかもロゼッタはとても可愛いうえに、前世がらみで俺に非常に懐いているときた。
魔王に覚醒してすぐに可愛い女の子にモテるにはどうしたらいいかと考えるくらいに、今の俺は可愛い女の子に興味があった。
というか女の子に興味がない男子高校生とかいないだろ。
「意見が合うじゃないか。俺もこういう忠誠心にあふれた部下を持ちたいものだな」
「忠誠心ならお任せあれ! 魔王さまのお傍にロゼッタありです!」
「……そうだな」
ロゼッタの俺に対する忠誠心は極めて高い。
おそらく全魔族の中でも1,2を争う忠誠心の高さだろう。
それは認める、それは認めるんだが。
繰り返される失言と大ポカが、それを補って余りあるマイナスなんだよなぁ。
「無能な働き者」という有名なフレーズが、俺の脳裏をチラリとかすめた。
その後、あれこれ感想会をしているうちに、流れるように時間は進み。
「さてと、じゃあそろそろ帰るか」
「う~、名残惜しいですぅ」
「そんなしょんぼりしなくても、また明日もあるだろ? それこそ高校生活はまだほとんど丸々残っているんだからさ」
「ですね!」
こうして初めての魔会は実に楽しく。
ここにさえいればロゼッタの失言も、勇者の転生体であるルミナを警戒する必要もなかったのもあって、俺はとても楽な気持ちで、実に有意義に過ごすことができたのだった。
こんな高校生活がだらだらと続いていく――そう思っていた時期が俺にもありました。
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