第14話「ソンナトコって、ドンナトコ~?」「エローい!」
「えっ、そんなとこって、どんなとこ~?」
「わたしもわかんなーい、ルミナ教えて~?」
「ソンナトコって、ドンナトコ~?」
「センセに見つかってヤバイ時は、猫を探してたって全力で言い張るのがお勧めだって。うちのお姉が言ってたよ~♪」
「エローい!」
ほらな。
俺の思った通りの展開だ。
結果的にメガトン級に大きな墓穴を掘ってしまい、
「~~~~~~~~っっ!!」
よからぬ場所でよからぬことをしちゃってるのを、つい想像でもしてしまったのか、ルミナは顔をリンゴのうように真っ赤にして、固まってしまった。
「はいはい。見ての通りのルミナは素直な子だから、あんまりからかわないでやってくれ」
苦笑しながら助けに入る俺。
魔王である俺を殺すためなら異世界にまでストーキングしてくるクレイジー勇者も、どうやら自身をコイバナの対象にされるのは苦手なようだった。
そしてどうよ、俺の演技力。
今のなんてまさに、可愛い女の子の前でカッコつけて助けに入った男の子だろ?
「「「はーい♪」」」
そして散々からかって盛り上がっていた彼女たちも、ルミナがどういう子なのかはよく知っているのだろう、素直に引き下がってくれた。
「マオくん――」
「さ、帰ろうぜ」
「はい……あの、ありがとうございました」
ちょっと恥ずかしそうに――だけど嬉しそうに――上目遣いで見上げてくるルミナ。
くそ、マジで何をしてもマジで可愛いな。
顔よしスタイルよし性格よし。
まさに究極の美少女だ。
勇者でさえなければ俺は全力アタックしたことだろう。
「別に礼を言われるようなことはしてないさ。みんなもちょっと悪ノリしただけで、すぐに引き下がってくれたし」
俺は笑顔で答えながら、いまだ顔を真っ赤にしたままのルミナの手を、今度は俺が引いて歩き出す。
ルミナも半歩遅れて、少しうつむき加減で歩き出した。
その姿は、カレシに手を引かれて恥ずかしそうに目を伏せるカノジョのようだ。
それにしてもさっきから本当に迫真の演技だな。
――ふむ、なるほどね。
そういうことか。
今の「からかわれて恥ずかしがったルミナ」は、素のルミナなのだ。
俺が魔王ブラックフィールドでありながら、同時に黒野真央でもあり、ルミナに手を握られてついキョドってしまうように。
ルミナも勇者ルミナスではない、女子高生の遊佐ルミナを内包しているんだ。
そしてルミナはその「2つの自分」を使い分けて俺に接しようとしているのだ。
普段は女子高生ルミナとして、俺に自然と接しつつ。
要所要所で勇者ルミナスとなって、俺の自白を引き出そうとしているのだろう。
やるな。
これはなかなか、きついものがある。
というのも、ワンミスすれば命が終わる俺は、常にミスをしないように気を張ってルミナを警戒し続けなければならない。
しかしルミナは、勇者であることがすでに俺にバレている以上、勇者ルミナスと女子高生ルミナを好きに切り替えて何の問題もないのだ。
そうなれば当然、精神的に先に追いつめられるのは、常に気を張り続けている俺の方だ。
精神的に追い込んで、機を見て決定的な失言を誘う。
なんともいやらしい作戦だ。
あまり勇者らしいやり方とは思えないが、非常に効果的ではあるだろう――ただし俺を除いてはな。
かつて史上最強の魔王と恐れられたこの俺の精神力を、あまり舐めるなよ勇者ルミナス?
その勝負、受けて立つ!
ルミナがどれだけ仲良しごっこをしかけてきても、俺は絶対に気を許すことなく、普通の男子高校生を装いながら、高校3年間をノーミスで逃げ切ってみせる!
(ここまで1秒)
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