第3話 正直者は損をする
美波は転落事故で電車に追突されて亡くなったのでニュースになり駅の映像が放送され通行人の中に夏の制服を着た女子生徒の後ろ姿が映ったので大騒ぎになった。
今の時期は冬の制服で夏の制服を着ている子はいない。
夏と言えば杏奈が亡くなった時期。
学の自殺も美波の事故も幽霊の杏奈の怨念だと噂になった。
山口春樹が藤原大和に話しかけた。
「あの映像、本当かな?」
興味なさそうに大和は答えた。
「後ろ姿だろ? たまたま似てただけだろ」
春樹と大和は杏奈の幼馴染だった。
春樹は俯きながら話す。
「まぁね。それに怨霊はさすがに酷いしな」
大和は頷いて言う。
「みんな言いたい放題だよ」
「確かに」
幽霊の杏奈はその話を聞いていた。
幽霊の杏奈は自分が怨霊と言われて腑に落ちない。
幽霊の杏奈は善意で美波が学に会えるようにしてあげたのだ。
大和の肩に幽霊の杏奈は手を乗せて言う。
「酷いよね!」
大和がびっくりして声をもらす。
「え?」
春樹が首を傾げて聞いた。
「何、どうした?」
目を丸くして大和が言う。
「杏奈の声?」
春樹は怖そうな顔をする。
「はぁ? やめろよ! 笑えねー冗談」
幽霊の杏奈が驚いて聞く。
「えっ聞こえるの? 大和!久しぶり、聞こえてる?」
大和が笑いながら言う。
「春樹がビビってるからだよ」
「ビビってねーし。大和はトイレ行けないくらいビビってるだろ?」
大和がニヤッと笑顔を見せて言う。
「トイレならついて行ってやるぜ」
春樹が拳を振り上げて言う。
「行くぞ! ビビり!」
2人は笑いながらトイレに行く。
幽霊の杏奈の声は聞こえていなかったようだ。
大和とは友達だが杏奈が大和に片思いをしていた時期もあった。
幽霊の杏奈は大和と話がしたいから声が届かない事に悲しくなる。
幽霊の杏奈は今日1日大和の後を追いかけた。
大和が自宅の前で足を止めて言う。
「いつまでついてくるんだ。俺には何もできない。ちゃんと天国に行けよ」
そう言って自宅に入った。
大和は幽霊の杏奈の事に気づいていたが1日気づいてないフリをしていたのだ。
幽霊の杏奈は嬉しくてたまらない。
幽霊の杏奈は家の壁をすり抜けて大和の部屋に入ってきた。
幽霊の杏奈は叫ぶ。
「大和! 好きだよ!」
大和は着替えてる最中だった。
「おい! 入る前に声かけろよ!」
「あっごめんなさい」
大和と幽霊の杏奈は背を向けながら話す。
「何だよ今更……」
「大和と話せなくて辛くて大和の事が好きなんだって分かった。学の事は恋愛とかの好きじゃなかった事に気づいたの。だから大和に好きって伝えたくて」
「ありがとう……気持ちは嬉しいけど……気持ちには応えられない……俺、好きな奴がいるから」
「好きな人……誰か聞いてもいい? 気になって成仏できないじゃん。」
幽霊の杏奈は平気そうに笑う。
大和はホッとしながら話す。
「冥土の土産に教えてやるよ。好きな奴は……平野真凛だよ」
「真凛ちゃんか……いい子だよね。教えてくれてありがとう」
そう言って幽霊の杏奈は去って行く。
翌日、浴室で溺れた真凛が発見された。
真凛は一人っ子で母親はシングルマザーで朝まで仕事で留守だった。
家の防犯カメラで真凛が家で1人だった事が確認された。
事件ではなく事故で溺れた事になった。
大和は学校を早退して自分の部屋にこもる。
大和は幽霊の杏奈に話しかける。
「杏奈……真凛を殺したのはお前か?」
「あぁ真凛ちゃんに話しかけたら声だけ聞こえたみたいで……あの子パニックになってさ……頭ぶつけて倒れて溺れちゃった。驚かすつもりなかったの……怒ってる?」
無表情で大和は返事をする。
「いや……」
幽霊の杏奈は笑顔を見せて言う。
「良かった」
「俺が真凛の事を言ったのが悪かった」
そう言って大和は制服のネクタイを輪っかになるように縛りドアノブに引っ掛けて自分の首を通して全身の力を抜いて首を圧迫させて自殺した。
幽霊の杏奈は呟くように言う。
「そうだよ。」
幽霊の杏奈は無表情で大和をずっと見ていた。
真凛の時と同じように助けず見ている。
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